今日は大和と二人で山奥に散策に来た。私が大和を誘ったのだ。自然の多いところなら人災もないでしょう!と大和を説得して。―――…そうだ。私は、少しでも多く、大和との思い出を作りたかった。もしかしたら、私が先に死ぬかもしれない。私が生き残ったとしても、大和は消えてしまうかもしれない。…次の元旦は、一緒に過ごせないかもしれない。そんなことを考え出すと、眠れなくなる夜がある。
「大和っ!」私が少し先で笑顔で手を振って呼ぶと、大和はやれやれと言った風に微笑みながら付いてくる。…こんなやり取りも、一体いつまで続けられるんだろう。大和は、私が何も考えていないと思ってるかもしれないけど、私だって私なりにいろいろ考えている。この平穏が、もしかしたらもうすぐ先で壊れてしまうかもしれない。だから、1日1日を大事に過ごしたい。やりたいことをやっておきたい。ほらあれっ!と、木々の隙間から見える綺麗な湖を指刺し、興奮する私の後ろから、「わかったから、ちゃんと帽子は被れ。」と、私の頭に帽子を被せる大和。「熱中症になるぞ。」振り返った時に見せたその笑顔は、とても優しかった。そんな大和になんだか、泣きそうになってしまう自分がいる。…大和はいつだって、私のことを考えてくれている。自分が一番大変なのに。一番辛い、立場にいるのに。役目も、責任も、全部一人で受け止めて、それでも私にこうやって笑顔をくれる。「確かに綺麗だな。」と言って、湖の全容を見ようと今度は私より先に歩き出す。それについていく。―――今は、生きている。私も、大和も。先日の、病院前での一件の時は肝が冷えた。今の私に何か出来ることはないかと思ったけど、この先何が起きるかもわからない以上、私の出来の悪い頭では何も思いつかなかった。それに少し焦っている自分がいる。私のために、人類のために、大和のために、今、何か、自分に出来ることはないのか。大和にも聞いてみたけど、「今は無い。」と言われてしまった。大和に生き残ってほしい。大和に怪我しないでほしい。大和に無理しないでほしい。―――そんなことを考えていたら、なんだか無性に、その背中が愛しくなって、「大和っ…!」思わずその背中に声をかけた。「ん?」振り返った大和は、どうしたとでも言いたげにきょとんとする。「…なんでもない。」でも、何を言えばいいのかわからず、そう言ってえへへと笑って誤魔化した。
今の内に、沢山。私はそう思って、夏の間、あちこちに大和を連れ回した。