「お。マイラ姉さんじゃん。」仕事が終わり、ドナとルイザがホームに帰ると、バーのカウンター席に見知った金髪の黒人女性が座っているのに気づいた。「ハロー♪ドナにルイザ!久しぶり♡」「相変わらず元気そうじゃん。最近良い感じだって聞いたぜ。」「まぁねー♡皆が結構頑張ってくれてるから、こっちとしてはウハウハよ♡」「ははっ、流石仲介業者…。」「今日はどうした?」「仕事の話で申し訳ないけど、…良い話持ってきたの♡」そう言って写真を3枚取り出した。
――――「行方不明者?」「そうなの。知り合いの情報筋からの話でね。なんか、依頼者の19歳の娘さんが3日前から行方不明らしくて。」ボックス席に、マイラ、ドナ、ルイザが座り、その傍ではダレルが立ち、エルバート、グレッグが隣のボックス席に座りながら話を聞く。マイラは1枚の写真をテーブルの上に置く。綺麗な子で、なかなかに遊んでそうな見た目をしている。「…家出とかじゃねぇの〜?」呆れたようにドナが突っ込む。「そう思うでしょー?…でもね、最近あちこちで同じようなことが起きてるらしいのよ。」1週間前にも北東の市で22歳の女性が、更に10日前には南西の街で25歳の女性が行方不明になっているらしい。「…」その情報を聞いて、場が静まり返る。女性ばかりで、家出とは考えにくい年齢の女性も含まれている。しかもその発生間隔は長いとは言えない。何らかの事件性を疑わざるを得なかった。とはいえ、ギャングやマフィア等が蔓延るこの国においては、行方不明事件とはそう珍しい話ではない。関連性があるかどうかは、何とも言えないレベルだった。「ちなみに、今回の依頼者けっこーなお金持ちで、見つけ出して連れ帰ってくれれば、かなりの額出してくれるって言うのよ♡」「よし、受けよう。」「受けんの早っ!」「ドナ、ルイザ。頼めるか。」「はぁ〜〜〜!?」たまらずドナが抗議の声をあげる。「お前たちは年齢も近いし、同じ女性だ。家出だとしても、その子達とも接触しやすいだろう。」「おいおいおい、この前言ったこともう忘れたのかダレル?『人生相談室』はやらねえってよ。」「相談には乗らなくてもいいんだ。連れ帰してくれればな。」「そりゃどんな状態でもってことか!?」「落ち着けって!」ダレルに食ってかかるドナをなだめるルイザ。「ま、取りあえず情報だけでも集めてみるか。」そう言ってドナの頭に手を乗せるエルバート。ジトっとした目線で歯ぎしりをするドナだった。
――――「はぁ〜〜〜〜だりぃ…。人探しってやることが地味で好かねぇんだよなぁ…。」肩を落とし、街中をガニ股で歩きながら愚痴るドナ。「まぁ…当たるまで地道にだからな…。」同じく苦手なのだろうルイザも若干同調する。「つーかよ、こんなん警察か探偵の仕事じゃねぇの?」それを聞いて呆れたようにため息をつくルイザ。「…あのな。警察がまともに捜査すると思うか?」「…ご尤も。」相談したところで、『家出か男関係だろ』で一蹴されて終わりだろう。「取り敢えず、成功すればでかい金が入るんだ。やるしかねぇだろ。」「へいへい。」そうしてモチベーションが上がらないながらも、聞き込みを開始した。
――――「なぁ、お兄さん。この子見たことねぇか?」ルイザは、女性がよく訪れていたというクラブに足を運んでいた。「あー…たまにそこの子とよく一緒にいるの見かけたぜ。」そう言う視線の先には、金髪の女の子が。―――「確かに最近見ないと思ってた。…なんか、最近父親と折り合い悪かったみたいだから、そのせいかなー。あぁ、3日前は私ここに来てたけど、会ってないよ。そういえば恋人と一週間前に別れたとか言ってたかな。」「そうか…。」大学の友達も皆、『受講が終わった後のことは知らない』とのことだったらしい。「早く見つかるといいんだけど。」「悪いな、ありがとう。」やはり家出か…?友達が匿っていて、親父には話せない、という可能性も無くはない。もしくは、その別れたという男…。立ち去ろうとするルイザに店員が声をかける。「ところで嬢ちゃん、飲んでかねえか?今なら安くするぜ。」「仕事中なもんでな。また今度にするよ。」そうして軽く断りを入れると、ルイザはクラブの出入口へと歩いて行った。
――――ドナは彼女の足取りを追っていた。「(ルイザがあたったクラブはハズレ。バイト先のカフェもシフトが休みだった。―――となると、)」地道に当たるしかない、か。はぁ~~~…とため息をつくと、頭をかきながら歩き出した。彼女が家に帰るまでによく通るルートを辿りながら、周囲の家や店の人に聞き込みをする。―――が、なかなかどうして収穫は無い。「どうだ?」『全然ダメだ。』ルイザには、彼女がよく遊びに行くという店をあたってもらったが、これもハズレ。「あ~~~…どこ行ったんだよ!!」休憩、と言わんばかりに公園のベンチに座り、煙草を吹かすドナ。「そもそもなんだって私がこんな…!!」ぶつぶつ呟きながら煙草を加えていると、公園近くのバーの店員が、ドナと同じく喫煙しながら店の外で休憩しているのが見えた。
――――「男と一緒に歩いてたのを見たな。」「!本当か!?」休憩して正解だったな!煙草様々だ!!と内心ガッツポーズをするドナ。「あぁ。綺麗な子だったからよく覚えてるよ。この辺りは、あの時間になると人通りも少なくなるしな。」店員が今と同じように外で煙草休憩をしていた時に、道を歩いているのを見かけたという。「一緒にいたのは、なんだかチャラそうな男だったな。」「二人はどこに?」「そっちの道へ歩いて行った。」店員が指したのは家とは別方向の道だ。「そうか…ありがとな!」だが、その後も聞いて回ったものの、結局その後の二人の足取りはわからなかった。
――――「22歳の子も、男と歩いてるのを目撃されてたぜ。」エルバートは女性の写真をテーブルに投げた。「25歳の女は、付近で怪しい車が目撃されていた。」グレッグも同じように写真を放る。「目撃情報があった場所周辺の防犯カメラを解析したら、一部男と歩く様子も映ってたんだが…。それ以降の映像がどの子も見つからなくて、結局足取りは不明だ。…そもそも行方をくらました場所っていうのが、人気が少なくてカメラが設置されてない場所ばっかりだしな。」ジョンがパソコンで地図や画像を見せながら解説をする。その後、全員の視線がテーブルの写真に集中した。「結局行方はわからずじまいか…。」「少なくとも、家出では無さそうだな。」「狙われているのは、『"若くて""綺麗な"女の子』ばかりか。」そのエルバートの言葉に、やれやれと言った風にドナが手を上げる。「しょうがねぇな…。こうなったら―――…『"若くて""綺麗な"女の子』である私が、囮になって調査するしかねぇか。」そう言って得意げな顔を浮かべて、ビッと自分を親指で指す。それを冷めた目で見ている仲間達。「若くて綺麗な女の子…?」「ルイザ囮にしたほうがよっぽど上手くいくぜ。」「ルイザのが綺麗だ!」「こ、こら、ニール!」男共の反応にブちぎれるドナ。「おいッ!!!」「…まぁ、万が一の時は近接に強いドナの方がいいだろうしな。」「いざとなったら色仕掛けもできるし。」「ルイザには無理だもんな。」「なっ…なんだよ!!」ドナはその会話の内容に若干苛立ちながらため息をつくと、気をとりなして腕を組み言う。「しかも犯人の好みは大人しくて可愛い系と見た。」「正反対じゃねぇか。」「うるせぇ!!―――ハッ、お前ら舐めんなよ。私だってやる時はやる。見てろ!!」渾身のどや顔だった。
――――次の日、「じゃあ私にお任せなさーい!♡」とノリノリなマイラに、ヘアセットとコーディネートをしてもらったドナ。髪を下ろし、シャツにカーディガンとキュロット、という清楚系の恰好をした出で立ちのドナが出来上がった。それを見た男共は少し小馬鹿にしたような笑みを浮かべていたが、「可愛いよ!」と褒めるトリシアが天使だったので、自信を持って、早速外へ出歩こうとするドナ。ホームの扉を開けようとしたところで、ダレルに声をかけられる。「気をつけろよ。」「わかってるって。」「くれぐれも無茶はするなよ。」「あーはいはい。」「お前はすぐに調子に乗るところがあるからな…。」「うるせえなッ!!おめーは私の父親か!?」振り返って見たダレルの顔は真面目そのものだった。「…どうやら、界隈の中で怪しい動きがあるようだ。」「…」既に察していたかのような反応をするドナ。おそらく人身売買だとかそのあたりだろう。「…何年やってると思ってんだよ。」「…それもそうだな。」「もしもの時は頼むぜ。」「あぁ。」そう言ってドナは、後ろ手に手を振って玄関を出ていった。
――――なるべく人通りの少ない場所を選び、とにかく歩く。ふと、背後から声をかけられたので振り返ると、そこには男が。「えー?なぁに〜?お兄さんナンパ〜?♡」キャッキャッと咄嗟に女モード全開で反応し会話をしてみるが、「(普通のナンパ野郎じゃねぇか!!)」という男ばかり。足蹴にして追い返してやる。「(…なんだ?この方法だと効率が悪いのか…?それとも…)」そこではっと気づく。「(私が犯人の好みじゃない…!?)」その可能性は考えていなかった…。などと考えていた時だ。「お嬢さん、」「―――!!」呼ばれて振り返る。きた、と思った。雰囲気でわかる。堅気のものではない。そう思いつつ、にこりと人懐こそうな笑顔を浮かべる。「なんですか?お兄さん。」「お姉さん、可愛いね。ちょっと一緒にお茶でもしない?」「え~?でもぉ、」「いいからさ。ちょっとカフェでお話するだけだよ。」「…少しだけなら。」そう言って男に誘導されるまま、一緒に歩いていく。どんどんと人気のない方向へ進んで行く。「…こっちの方にカフェなんてあったんですね〜。」「最近出来たんだよ。」「(胡散臭ぇ〜〜。)」そこからまたしばらく歩く。前方から走ってくる車を、ドナの目が捉えていた。―――すると、「!」車から突如複数の男達が現れ、性急な動作でドナの目と口を塞ぎ、後ろ手に拘束する。そして速やかに車の中に引きずり込んだ。「(―――こりゃ、普通の女は声も出ねぇな。)」あまりにスムーズで無駄のない動きに少し感心してしまう。男達は相当手慣れていた。車は動き出す。男達は無言だ。車はどんどんと進む。右に、左に、何度も曲がりながら。数回目の曲がり角に差し掛かった時にはもう、方向感覚は失われていた。進んでも進んでもなかなか目的地に着くことはない。「(…なるほどな。随分離れた場所にあんのな。)」通りで足がつかねぇ訳だ。それから更に移動していくと、やがて車は停車した。体を担がれ、どこかへ運ばれる。
――――「…!!」床に座らされ、目隠しを取られる。そこには、薄着の女性たちが数人、脅えるように身を寄せ合い座っていた。その中には、写真で見た女性もいる。「――!」例の19歳の少女もそこにいた。辺りを見回すとそこは、まるで牢獄のような、鈍色のコンクリートで固められた一室だった。「状況を理解したか?」背後の男の声に振り返る。男の背後では3人の男が、銃を手に入口を塞いでいた。声をかけてきた男が、「立て。」とドナに言う。素直にそれに従う。「手を挙げろ。」男の指示通りに手を挙げると、男はドナの体に触れてきて、身体チェックをしてきた。触れ方やその動きは事務的だった。何もないことを確認すると、男は何らかの布を放り投げる。「!」女性では大きいサイズのぶかぶかのTシャツ一枚と、下着。「着替えろ。」指示通り着替えてやろうと、屈んで服を拾いあげると、「ここで脱げ。」と言われる。抵抗の意思表示として黙ったままでいると、「さっさとしろ。」と銃をちらつかせてきた。内心ため息をつきながら、諦めたように服に手をかける。上着に、シャツに、ズボンに、まるでストリップショーだ。下着姿になり、再びシャツを拾おうとするが、「そいつもだ。」と、下着も脱ぐように指示をしてくる。「(おいおいおい…)」少し躊躇う素振りを見せるが、男は変わらず見つめて来るだけだった。仕方がないので、黙って下着も外すことにした。やがて、下着も脱いで一糸まとわぬ姿になった。「…それから、その腕時計もだ。」「…」腕時計も黙って外し、放る。すると、背後にいた男の内一人が、ドナに近づいてきた。不躾にドナの顎を掴み上げ、品定めをするようにジロジロと見る。眼帯をめくりながら「――傷物だが、なかなかの上物だな。」と下卑た笑みを浮かべた。「…」その発言に、ドナの眼光が鋭く光る。その視線に思わず男はたじろいだ。「な…っ、なんだよ…!」男は気分を害した、とばかりにドナの顎を掴んでいた手を、乱暴に離した。ドナは一瞬男を睨みつけた後に、床に置かれた下着とシャツを拾い上げ、自分の体へと身に着けた。服を着ている間、ドナが身に着けていた服や腕時計は、男達がまとめてどこかへ持って行っていってしまった。あの服はきっと処分されるのだろう。わずかな時間で確認した時計を見るに、車で2時間は移動していたようだった。
――――「…私達、どうなっちゃうんだろう…。」男達が去った後。部屋の女達から話を聞くドナ。ここに捕まった女性は、どこかの国へ売られたり、売春宿で働かされるのだという。行き先が決まるまで、ここで見張りがいる中、監禁されるのだとか。「帰りたい…っ!」ドナは慰めるように、脅える女性の背中に手を乗せ、優しく撫でてやった。その背中は小さく、震えていた。―――夜、後頭部の髪の中をゴソゴソと探るドナ。ヘアピンと一体になった四角の無機物を取り出す。それを確認すると、再び元の位置へと戻した。「ねぇ。」扉の向こうの男へと呼びかける。「トイレに行きたいんだけど。」そう言うと、監禁部屋に男が入ってきた。「(げっ)」先ほどドナを品定めしていた男だった。「来い。」そう言って部屋の外に誘導される。銃を突き付けられたまま、トイレに向かう。大事な商品だからか、流石に『部屋でしろ』なんてことは言ってこなかった。移動中も、見張りが何人もいるのを確認した。「(どうすっかな〜。)」トイレの部屋の窓は小さく、とても人が通れるサイズではなかった。ここから抜け出して探索するというのも難しそうだ。トイレを出ると、男に監禁部屋と別方向に歩くよう誘導される。「?」そのまま別の部屋に連れ込まれた。そして、「!」そこに置かれたベッドへと押し倒された。男が覆いかぶさってくるが、動じない。「…お前、慣れてやがるな。」男の問いに、にやりと笑いかける。「慣れてる女はいや?」「!」そう言った直後、腕を掴み形勢逆転―――男に馬乗りになる。そして、妖艶な笑みを浮かべる。「遊んであげてもいいけど…商品傷物にしていいの?」「…!」「悪いけど、今日はもう疲れたの。」そう言って艶やかに耳元で囁く。「同じように誘ってくれれば、また明日、相手してあげる。」意外にもそのまま帰された。
――――「あー…完全に黒だ。」真夜中、女たちが寝静まった頃に、隠し持っていたロイド特製の小型無線で報告するドナ。トイレは狭く、壁から外に音が筒抜けになりそうだった。監禁部屋はなかなかに広さがあり、端の方で小声で話せば扉の向こうの見張りには聞こえないレベルだった。「構成人数は少なくとも10人以上はいるな。見張りが頻繁に入れ替わるらしい。」女に現を抜かさないように、等の意図があるらしい。「建物自体はそこまででかくねぇ。廊下も部屋も全体的に狭い。―――残念ながら、見張りが多くてこの部屋から殆ど動けねぇ。今のところ大した情報ねぇぞ。」こそこそと話すドナの背後で、女が聞き耳を立てていた。
――――朝、突然男達が監禁部屋に入るなり、ドナを後ろ手に拘束し、別室へ移動させた。壁際の床に座らせたドナに平手打ちを食らわせる例の男。「さっさと吐け。」おそらく、昨日の夜のドナの話を聞いていた女が、トイレに行った際にでもチクったのだろう。大方、代わりに見逃してほしいとの条件付きで。「お前、どこのモンだ?警察か?探偵か?」「…」部屋には男一人。見張りは扉の外。男の持つ腕時計は、9:15を指していた。それを確認した途端、―――近づいてきた男の顎を蹴り上げる。「…!!」男は脳が揺れて、その場に倒れこみ、気絶する。ドナは拘束していた縄をするすると解いた。「はっ!いっちょやるか。」笑みを浮かべ、肩を回し、首を傾けてこきりと鳴らす。直後、音を聞きつけた男2人が乗り込んできた。ドナは扉裏に身を隠しながら、先ほどの男からパクった銃で数発弾丸を撃ちこむ。倒れこんだ男達から瞬く間に銃とナイフを奪い取ると、銃声を聞いて駆けつけた別の男2人へと一気に距離を詰めた。脇にするりと入り込み、ナイフで一人の脇腹を刺し、銃でもう一人に弾丸を放った後、最後は蹴りで相手を沈めた。その後も現れた男達を、ナイフと銃を駆使しながら次々になぎ倒していく。この狭い建物の中では、素早く機敏に動けるドナが有利だった。時には銃を、時にはナイフを、時には体術を利用し、1人、2人…と、何人もの男達を床に転がしていく。体と服が、返り血を浴びて赤く染まっていった。やがて入り口まで辿りついたものの、そこには既にぞろぞろと数人が集まり始めていた。「(うわ、やべ。)」流石に一人じゃ厳しいな…―――と思っていた時だった。「はいはい、そこまでだぜ。」銃を構えたエルバートとグレッグが、扉を蹴り開け入室してきた。エルバート達は容赦なく男達に銃弾を浴びせていく。敵側が反撃すると、さっと物陰に身を潜めた。「おい、おせーぞ!」同じく銃を構えながら壁を背にしてドナが叫ぶ。「これでも飛ばしてきたんだよ!」ドナがGPSを身に着けていたため、それを追って来ていたのだ。「つーかちょっと待ってろって言っただろうが!!手ェ出すのがいつも早いんだよ、お前は!」「しょうがねぇだろ!!先にあっちが喧嘩売ってきたんだから!!」「買うな!!ちょっとは耐えろよ!!」弾丸が飛び交う中、ドナとエルバートが言い争っていると、扉から新たな人物が現れ、敵の集団に向かい弾丸を立て続けに撃ち込んでいった。「元気そうで何よりだな。」そう言って、次々に銃弾を命中させていくルイザ。「さっすがぁ!」「―――それで?女達は?」ルイザの一声で、4人でぞろぞろと、女性達の監禁されている部屋へと走り出す。最後尾のグレッグが後方へ銃を撃ちながら敵を牽制する。辿り着いた部屋の様子を見て、「…酷ェな…。」と絶句するエルバート。そして自身が来ていたスーツの上着を、女性に着せた。グレッグも同様にスーツを脱いで女性に渡す。―――玄関前ではブレットとロイドにより、敵が一掃された。一部の敵は逃げ出そうと建物の逆側から外に出たが、出た瞬間に銃弾を浴びて倒れこむ。外にはギルが待機しており、建物から出る敵をスナイプをしていた。そしてあっという間に組織を壊滅させるのだった。ドナ達が表に出てきた頃。「―――…は?」ファンファンと何やらサイレンが聞こえてくる。「サツかよ!!」と叫ぶドナに対して、エルバートはじめ他の面々は冷静だ。淡々と逃げる準備を整えている。「ずらかるぞ。」
「…ッは~~~~疲れた…。」ソファにどかりと座り込むドナ。「ご苦労だったな、ドナ。」「にしても、今回はやけに判断が早かったな。」エルバートの問にダレルが答える。「今回の依頼はあくまで『行方不明者の捜索と保護』だからな。それ以上は警察の仕事だ。」このまま数日潜入捜査をしてもよかったが、現在捕まっている女性達の保護を最優先にした。売買先の女性たちの捜索については、警察の仕事だ。これだけ材料があれば、流石に警察としても見過ごせないだろう。「まあ私としても、何日も潜入するのはだるかったから助かったぜ。」「だからって先にけしかけんなよ…。」「とにかく無事で良かった。」「あー…はいはい。」ひらひらと手を振るドナにダレルは微笑む、「裸には剥かされたがな。」「!?」一同に衝撃走る。「な、なんでだ!?」「服や小物に何か仕込んでないかの確認と、商品としての品定め、って感じだろうな。」ドナの発言にルイザを見やる一同「ルイザのやつを行かせなくて良かったな…。」「あぁ、ルイザには荷が重かった。」「なッ…!!なんだよッ!!」騒ぐ仲間たちを見ながら笑うドナだった。