【12話】決戦③(水曜日)


先ほどのおぞましい気配に焦る弁財天。「どうしよう、多分神社の方だよ…!すぐに行かないと!」「でも、こっちにはまだ残党がいるよ。…ここで食い止めないと。」「そうだけど…ッ!!」「こっちは私に任せな。」「大黒天!」二人の元に大黒天が現れる。「残りはどうせあと少ないし、私と恵比寿で片づけるから、弁財天はさっさと行きな。だろ?恵比寿。」「…そうだね。弁財天は先に行って様子を見てきて。私と大黒は後から行くよ。」「…わかった!」そう言うと、三者散り散りに駆け出した。
―――――寿老人、福禄寿、布袋、猫又、座敷童が山を急いで駆け降りていく。「…さっきの、何かしらね…。」「あんなの今まで感じた事ねぇ…。とんでもねぇ気配がしてたぞ…!?」「皆大丈夫かな…。」座敷童は不安で泣き出しそうになっている。その様子を悲痛な面持ちで見ている布袋。「…何もないと良いんですけど…。」「…ともかく、急ぐぞ。」寿老人の言葉に、一層足を速める5人だった。
―――――「…おいおいおい、やべぇぞ…!!」「あいつは…。」狐とぬらりひょんが見下ろす先にいるその何者かは、じっと神社の方を見上げていた。明らかに纏っている“気”が、他の妖怪達とは違う。狐の毛がざわざわと逆立つ。その感覚だけで只者ではないと察知した。その男は、ゆっくりと石段に片足をかける。「登ってくるつもりかよ!?」狐は鳥居の前で臨戦態勢を取る。尋常じゃない気の量と邪悪さだ。絶対に人間に近づけてはならない。「お前らはもっと下がれ!!」「はっ…はい!!」狐に指示されるがまま、真志の両親は住民たちに危険だからと下がるように呼びかけ、促す。人間達の中にも何か気配を察している者がいるようで、青ざめたり脅えたりする様子も見える。そんな人々を見た後に、狐は千何百年ぶりに訪れた脅威に視線を戻す。男は一歩一歩、まるで踏みしめるようにしながら石段を登り、着実に距離を詰めて来ている。「(俺がなんとかしねぇと…!!」)」この神社には多くの人が避難してきている。狛虎も、七福神達もいない今、ここを守ることができるのは狐しかいなかった。そんな狐の隣に、ぬらりひょんも立つ。「お前…。」「…当たり前だろ。俺だって、この町の住人だ。それに…俺だってお前の相棒だ。」「!…ったくよ…!」そして二人で男に向き直る。「…俺の力は、『護り』に特化したものだ。…もしもの時は、頼むぜ。」「あぁ。」そして狐は目を細めて精神を集中し、全身に周囲のあらゆる気を集めるようにして力を込める。そしてカッと目を見開くと、溜めた力を解き放つ。狐の放った力は形を成して、神社周辺に強固な結界を張り巡らせた。狐のすべての力は今、ここに集約している。「…これがどの程度奴を防げるか…。」まだ遥か下にいる男の出方を伺っていると、突然男は姿を消した。「!?」そして、次の瞬間には、狐達のすぐ目の前にまで迫っていた。「!!」「なッ…!!」しかもその手には刀が携えてある。男は性急な動作で、いつの間にか抜き身となった刀を頭上から振り下ろした。「…ッッ!!」狐が力を込め、結界でそれを防ぐ。刀と結界が接した瞬間、激しい音と閃光が走り、そして気の波によって風が巻き起こる。後ろからは住民の「きゃあッ!!」という悲鳴が聞こえてくる。「(とんでもねぇ力だ…!!)」一身に受け止める狐は結界が割られないよう、全神経を集中して力を投入する。少しでも気を抜くと、あっという間に結界は割られ、狐自身が吹っ飛ばされてしまうだろう勢いと強さがあった。必死になって男の攻撃を食い止める。そんな最中、母親と共に境内の奥に避難していた子供が、母親に抱かれながら何かに気づいたように呟く。「あ…。」視線の先では、鳥居の前で力の限り踏ん張っている狐の姿が薄ぼんやりと見えていた。攻撃に耐える狐に、ぬらりひょんが横から声をかける。「行けるか。」「物は試しだッ!!」ぬらりひょんの問いかけに狐が力を放出する。結界に接している刀へばちりと一点集中攻撃で、男の攻撃を跳ね返した。「!」男の体が後ろへ傾き、宙に浮く。その隙に、ぬらりひょんが両手をかざしてその掌から何かを打ち出した。「…!」直径20cmほどの気の塊のようなものは、高速で男へ撃ち放たれ、男の腹部へと直撃する。そして男を押しやったまま石段の遥か下へと直行し、ドカン、と大きな音を立てて男を地面に激しく激突させた。大きな衝突音と、激しい砂埃を舞わせる。警戒を崩さずに、狐とぬらりひょんは男の様子を伺う。煙に乗じて移動しないか、等注意していたが――――ややして煙が晴れると、男はクレーターが出来た場所に佇んでいた。「…マジかよ…。」背筋を伸ばし、呼吸を乱すことなくしっかりと地に足を付けて立つ男の様子は、それほどダメージを受けていないように見えた。対して狐はというと、たったあれだけの攻撃で既に息も切れ切れだった。隣で青ざめる狐の様子を見て、ぬらりひょんも戦況を察する。「(…保たねぇな…。)」この男の気配を察した七福神達の到着を待つとしても、逆立山方面からこちらまでの距離を考えると時間稼ぎが必要だった。だが、この戦力差では、彼女たちの到着まで保ちそうにない。気が変わって帰ってくれないか、なんて叶わぬ願いが過るが、それも虚しく、男は再び石段に足をかける。再び臨戦態勢に入る二人だったが、男は突如何かの気配に気づいたように、石段に片足をかけたまま横を振り向いた。狐とぬらりひょんも、その視線の行く先を追う。男は、狛虎に乗った真志の姿を捉えていた。真志は冷や汗をかきながら、化け物でも見るような目で男を凝視している。「…お前、なんなんだよ…ッ!」男に今にも食って掛かろうとする阿形と真志の様子に、狐が制止の声をかける。「真志ッ!!そいつはヤバい!!逃げろッ!!」流石のお前にも手に負えないと、逃げるよう促す狐。だが真志はそこから動こうとはしなかった。それどころか、阿形から降りて男に対峙する。男も、石段から足を下ろすと、真志の方へと向き直った。「真志くん…!!」「小百合!!」狐達の後方から現れたのは、吽形に乗った小百合だった。「なんでお前…!」「真志くんが、危ないから別の方向から登れって…。」吽形は小百合を下ろすと、再び主の元へと石段を駆け降りていった。真志の元へ辿り着いた吽形は、阿形の隣に並ぶ。「真志…!」狐達の心配するような気配を感じながらも、目の前の男から目を離さない真志。「(ここでやっておかなきゃヤバいって、俺でもわかる。)」目の前の男は見るからに邪悪な雰囲気を纏い、それでいて強かった。下手をすると毘沙門天並みか、それ以上の力を感じる。だが、神社には、小百合も、両親も、狐も妖怪達も、町の住人達もいる。危険に晒すわけにはいかなかった。ここで食い止めなければいけない。やれるか?ではなく、やらなければならないのだ。真志の想いに呼応するかのように、まりもも出現する。だが、やる気満々と言った様子の狛虎とまりもを真志は一度制止した。「(…多分、俺が第一優先にすべきは“時間稼ぎ”―――…。)」勿論自分が倒してしまうのが一番なのだろうが、あの狐とぬらりひょんが苦戦するほどの相手だ。それは難しいのだろうことは真志自身も察していた。先ほど『増幅』の力に目覚め、狛虎やまりもを覚醒させることもできたが、修行もしていない一人間の力などたかが知れている。ならば、こいつの気配を察知した七福神達が到着するまで食い止めるのが自分の仕事だと結論づけた。思考をそこまで巡らせた真志は、男に向かって言葉を投げかけた。「…あんた、何者だよ。」「…」「あの貧乏神とかの仲間か?何しに来た。…この町で、何がしたいんだ。目的はなんだよ。」「…」真志の問いには一切答えず、無言を貫く男。「(…おしゃべりするつもりはないってことか…。)」となると、やはりやるしかないのだろうか。そう思い、まりもと目線を合わせる。力の使い方はこの短時間で段々と理解しつつあった。「…やれるか。」「勿論です。」すると、狛虎と同様に、まりもの容姿も見る見る変異していった。剣や服、頭の装飾が増えて、目つきも変わる。纏う“気”の量も増加している。「真志…。」「…やるつもりなのか…。」狐とぬらりひょんの呟きに、小百合が手を合わせながら心配そうに見つめる。「真志くん…!」自分からは仕掛けずに、男の出方を伺う真志。下手に刺激しないで済むならそれが吉だという理由と、あとは男の力が不明であるために慎重に対処すべきだとの判断だった。「(3対1で卑怯だとか、そんなこと言ってる場合じゃねぇからな…。)――――!」すると、男は刀を持つ腕を上げたかと思うと、そのまま構えの姿勢に移る。それを見た真志も警戒を強めた。次の瞬間、「!!」男は真志のすぐ目の前に迫っていた。が、それを横から突き出したまりもの剣が食い止める。「(早い…!!)」まりもはギリギリと男の刀を押し返す。その隙に、阿形と吽形が男に襲い掛かる。男は後方に向かって高く跳びながらそれを避けるが、二匹はそれを更に追及する。間合いを意識しながら、男からの刀撃を避けつつ、爪で切り裂いたり噛みつこうと仕掛けるが、男の素早さがそれを許さない。男は、二匹相手に一切隙がなく、無駄のない動きをしていた。そんな中、二匹が作った死角からまりもが飛び出していく。「!」まりもの剣撃を男はあっさりと避ける。が、それにまりもは怯む間も無く二手、三手と次々と攻撃を繰り出した。男は身軽な動きで体を横に翻したり、のけぞったりと、それを免れていく。そこに吽形が鋭い爪の攻撃を仕掛けるが、男はそれを刀で受け止めた。まりもが横から斬りつけるが、近くにあった塀を駆けあがりながら二人の攻撃を避けた。――――3人と男の戦闘を見ながら、狐は驚きを隠せなかった。そんな狐の周囲では、いつの間にか人間達が数人、何事かと興味深げに石段の下を見下ろしていた。「(あんな奴相手に食らいついてやがる…!!)」狛虎と九十九神の元々のポテンシャルもあるだろうが、それにしたってあの男に対してあそこまで対応できるとは。やはり真志の力に依る部分も大きいと思われた。「(にしたって、なんでこんなに?)」力に目覚めたのはつい先ほどというのに、ここまで使いこなせるだなんて。遥か昔に培った力が、『我』に刻み込まれていたのだろうか?「…」「阿形くん、吽形くん、まりもちゃん…ッ!!」祈るような小百合の言葉にはっと我に返る狐。3対1ということもあり、男を圧しているように見える。真志の力は覚醒し、意志の強さに比例して強くなっている。…もしかしたら――――…と思わせた時だった。突然、素早い動きで阿形の懐に入り込んだ男は、そのまま阿形の胸元を斬りつけた。「!!」「阿形ッッ!!!」「くッ…!!」阿形に追撃しようとしかける男に対して、吽形とまりもは怒り狂ったように男へ駆けていく。そのまま二人で攻撃を仕掛けていくが、男は軽やかな動きでそれを避けていくと、吽形を横から斬りつけた。「吽形ッッ!!!」すぐさま男に斬りかかるまりもだったが、刀でそれを受け止められる。次の攻撃、次の攻撃と行くが、全ていとも簡単に刀で止められて受け流される。その手ごたえのなさにまりもは察した。「(この人、まさか――――…ッ!!)」圧されていたのではない、彼はずっとこちらの3者の動きを分析していたのだ。つまり、「(加減してた…)」次の瞬間、まりもは刀で腹部を貫かれていた。「―――…ッッ!!」刀を引き抜かれたまりもがその場に崩れ落ちるのを、真志は絶望した表情で見ていた。「まりも…ッッ!!」そのあまりにも早すぎる展開を、皆唖然としながら見ていた。3人が倒れる傍で、ゆらりと真志の方を見る男。その時、真志の心臓がドクドクと嫌な音を立てる。冷や汗が噴きだし、頭が真っ白になる。男は真志に向き直ると、その足を踏み出した。「真志!!逃げろッッ!!!」狐がたまらず声を荒げるが、真志の耳には届いていない。そもそも、大切な3人が痛めつけられて自分だけ逃げられる筈がなかった。「(どうする、どうにかしないと、どうにか――――)」だが、自分を守ってくれる3人は負傷し地面に伏している。非力な真志には、圧倒的な力を持つ男相手に為すすべがなかった。その時、「!」男の足をまりもが両腕で掴む。「まりも…ッ!」「真志様…ッ!!逃げてッ…!!」まりもが必死になって男の脚を掴んで離さない。「…」「まりも!!いい!!離せッ!!」真志が危惧していたように、男はまりもを見ながら刀を持ち換える。「まりもッ!!」たまらず走り出す真志。まりもに刀を振り下ろそうとする男まであと一歩、というところで、突然男がぐるりと振り返った。「!!」「真志様ッ!!」そしてまりもに向けられていた刃は、真志の元へと振られる。そのあまりの速さに、真志は思考と体が追い付かず、迫ってくる刃をただ見ていることしかできない。「真志くんッッ!!!」頭上から聞こえる小百合の泣きそうな声を聴きながら、「(もう駄目だ。)」と、冷静に、淡々と、真志がそう認識した時だった。真志の目の前に、何者かの影が現れる。ガキィン!という激しい金属音と共に、男の攻撃は止められた。男と真志の間に立つのは、着物を着た長身の女だった。「…今度は間に合ったな。」「―――毘沙門天…ッ!!」男の刀を、同じく刀で受け止めたのは、毘沙門天だった。毘沙門天が刀で押し込み、振り払うようにすると、男は新顔に対して後方に高く跳んで距離を置いた。血だらけになりながら倒れる3人と、神社から見下ろす狐や小百合達を見て状況を理解した毘沙門天は、男に刀を構える。「よく耐えたな、真志。」その傍らから毘沙門天の虎が現れ、狛虎二匹とまりもに近づいていく。真志も3人の様子を見ながら問いかける。「お前…なんでここに!?」逆立山からここまで、急いで走ってもあと10分はかかる筈だ。「吉祥天が教えてくれた。」「吉祥天が…?」先ほど毘沙門天の去り際を止めた吉祥天。――――「もしかすると、人間が狙われる可能性があります…!」「何…?」「それも、大きな力が――…!」「!」――――「吉祥天がどこまで知っていたかはわからないがな。」その時、どこからともなく鹿が現れた。毘沙門天がそれに気づくと、「お前もあいつらを避難させてやってくれ。」と声をかけた。鹿は毘沙門天の指示通りに歩き出すと、まりもの傍に近づき、背中に乗れ、と言わんばかりに屈んだ。その傍では、毘沙門天の虎が吽形の首根っこを咥えて引きずるように運び、真志がひょこひょこ歩き出した阿形を介抱していた。それを確認した後、男をまじまじと見つめると、はっと何かに気づいたように驚きを見せる毘沙門天。「…お前、“阿修羅”か…!?」その言葉に、阿形に逃げるよう促していた真志が振り返って声をかける。「!阿修羅ってあの…?」
―――――「…やっぱりか。」毘沙門天の発言を聞いたぬらりひょんが呟く。「なんだよ!?」お前何か知ってるのか、と言わんばかりにぬらりひょんに食って掛かる狐。「阿修羅って言やぁ、天部から修羅に落ちた奴じゃねぇか。」「…!」「確か改心して天部に戻ったとか伝わってた筈だが…あの様子じゃあそうでもねぇらしいな。」ぬらりひょんの言葉に、狐は再び依然として微動だにしない男に目を向ける。通りであのような恰好、あのような“気”の気配をしている筈だ。
―――――「…なんでこんなところに…。」「…知り合いなのか?」「…大昔、天上の戦争でお目にかかったことがあるくらいだ。…敵側としてな。」「!敵…。」「直接戦ったことはねぇかもな。」そう言って毘沙門天は刀の構えを変え、臨戦態勢に入る。「!」真志がそれに気づいた時、男―――阿修羅の方が、攻撃を仕掛けてこようとしていることに気づいた。「お前は離れてろ。」
―――――「大黒!」残党を片づけた大黒天と恵比寿が合流すると、山を降りてきた寿老人達も現れた。「おっ、お疲れさん。」思えば、作戦開始から殆ど走ってばかりの一行。息を切らしながら辿り着く。一度息を整えながら、寿老人が二人の顔を見やる。「…あの気配の正体は、阿修羅だ。」「!」「私の鹿を向かわせた。…今、毘沙門天が相手をしている。」「毘沙門天の姿が見えないから、片方はそうかなとは思ったけど…。」皆、先ほどの阿修羅と毘沙門天の激しい衝突の気配を感じ取っていた。「まさか相手が阿修羅なんて…。」「どこに行ったのやらと思ってたけど、こんなところに現れるなんてね。」「弁財天は?」「ちょっと前に向かったよ。」「そうか…。」「この辺りはもう大丈夫なの?」「ちょうどいま片付いたところ。」「それなら、急いで私達も早く行きましょう。」
―――――「…すげぇ…。」離れたところからその光景を見ていた真志が思わずつぶやく。阿修羅と毘沙門天は刀のみで戦いを繰り広げていた。互いに素早く、無駄のない綺麗な動きで、休むことなく斬り合いをしていく。片方が刀を振るうと、もう片方が体を反らせて避けるか、自身の刀身で受け止めることで、着物は掠れど、決して己の肉は切らせない。刀同士が交差する度、激しい金属音が辺りに響き渡り、火花も散らせる。両者互いに譲らず、その力は拮抗しているように見えた。純粋な斬り合い。純粋な強さを求めた戦いだった。毘沙門天は、とてもブランクがあるとは思えない刀裁きと身のこなしで、それどころかこれまで見せてきた戦いのどれよりも洗練した動きを見せた。まだ実力を出し切っていなかったのだと思い知らされる。「(…つっても、そんな毘沙門天が本気を出さなきゃヤバい相手ってことか…。)」そんな相手との本気の斬り合いというのが久々だった毘沙門天は、戦いの中で高揚し思わず笑みがこぼれてしまうほど。「―――…全く衰えないな、阿修羅…。」「…」互いに一度距離を置く。やや息を乱した毘沙門天に対し、阿修羅は平然としているように見える。面の下は、どのような表情をしているのか覗うことはできない。攻撃の手が止まった今を好機、とばかりに毘沙門天が話しかける。「…如来の元で改心したと聞いていたが、違ったようだな。」「…」「…正直、”天部に復讐”ならわからなくもない。お前には相応の理由もあるだろう。かつての戦も、決着はつかずじまいだったしな。…だが、民を狙うのは話が違うんじゃないか。」この1週間弱、地上で人々と触れ合って過ごした毘沙門天は、これまで以上にその想いが一層強くなっていた。長年忘れかけていた思いが蘇る。
―――――「…なんだ?どういうことだ?“天部への復讐”って…。」ぬらりひょんに問いかける狐。「…聞いた話だが、阿修羅は、『帝釈天』とかいう四天王のトップの座に君臨する天上人に、娘を無理矢理嫁に嫁がされたらしい。其れに激怒した阿修羅が、軍勢を上げて帝釈天側に対して戦争を起こしたそうだ。結果は敗戦。そのまま憎しみと怒りに囚われ、修羅の道に落ちたみてぇだ。」「…!」
―――――「…私は、本来ならどうこう言える立場ではないかもしれない。あの件に関しては、『天上を乱す者を制圧する』役目を負っただけの、お前の軍勢と戦った大勢の中の一人にすぎないからな。…だが、怒りに我を忘れ妄執にとりつかれたお前を、同じ天部の者として放っておくわけにはいかない。まして、民にまで危害を与えようとするならば尚更だ。このまま見過ごすわけにはいかない。」「……」阿修羅はただそこで佇むのみだ。だが、何故か攻撃に転じる様子はない。―――その時、ふと毘沙門天の頭の中にあることが過る。もし、言葉が通じるのなら。戦わずして解決する術はないか。今回の件について奴がどこまで関わっているのかは不明だが、無関係ということはありえないだろう。相応の罰が下るのは間違いない。…だが。「…釈迦如来はお前のことを信じ、待ち続けている。天の至る場所にお前の居場所を空けている。…お前が、いつ戻ってきてもいいようにと。…娘も会いたがっているぞ。…あのような始まりではあったが、今では帝釈天の奴とは仲睦まじくやっている。何も心配はない。ただ、お前のことをいたく気がかりにしていた。帝釈天も――…相変わらずのクソ野郎ではあるが、…それでも昔からは変わった。年月を経て大分落ち着いたようだ。…挙句には、お前に詫びたいとも言っていたぞ。あの器の小さかった自己中な男がだ。」毘沙門天の言葉を理解しているのかいないのかわからないが、構わず続ける。正気を失う前の彼は、温厚で、その柔らかな表情で、周りも、民も、思いやる男だった。「この世は諸行無常だろう。この数百年で地上の景色や人が変わってしまったように、状況も、環境も、個々の気持ちも考え方も、全てが刻々と変化していくものだ。…お前以外の者は、皆その変化を受け入れた。…いや、己でそれをもたらした。…この数日、この町にいてわかった。…変化も、悪いことばかりじゃない。新しい気づきや、別の道へ進む選択が生まれる可能性だってある。大事なのは、『変化に順応する』ことだ。…お前だって、同じだろう。」そう言いながら毘沙門天は、背後にいる真志達や、神社から見下ろす人間、妖怪達の気配を感じる。「…確かに長い年月を経てしまった。過ぎてしまった過去も取り戻せはしない。だが、すべては今、この瞬間からどうするかだ。お前には、帰る場所も、帰りを待ち続ける者たちもいる。そして…お前が危害を加えようとした人間達の中にも、『阿修羅』を信仰する者がいる。これ以上は、お前自身にも、お前を思う者たちのためにも良くはない。あとはお前が―――…。―――!」毘沙門天の言葉も虚しく、阿修羅は再び刀を構えだした。そして、一切耳に入らないといった風に俊敏な動作で攻撃を仕掛けてくる。それを刀で食い止める毘沙門天。その力強さは、『話しても無駄だ』ということを表していた。「……やはり、修羅に落ちた者か。」阿修羅の攻撃を振り払いながら、今度はこちらから仕掛ける。横に、縦に、と振り避けられる中で少しの違和感を覚える毘沙門天。お返しとばかりに阿修羅が腹部目掛けて斜め下から刀を振り上げられる。それを刀で受け止め火花を散らせながら流し、次に来た突き攻撃を顔を避けて躱す。そしてそのままの動きで、咄嗟に逆手に刀を持ち換え首目掛けて斬り上げる。が、それも避けられたため、すぐさま刀の持ち手を戻す。「(…さっきよりも早いな…。それから―――)」「!」先ほどとの阿修羅の動きの変化に、真志は先ほどの自分達の状況と被ることに気づく。「(まさか…あいつ、毘沙門天相手にも…!?)」加減していたというのか、と真志が考えた瞬間。「!」振りかぶった阿修羅の刀の切っ先が、毘沙門天の頬を掠った。「毘沙門天…ッ!!」真志が思わず名を呼ぶ。だが、そんな真志の心配をよそに、毘沙門天は戦いの最中だというのに笑みをこぼした。「!?」毘沙門天は、阿修羅からの脳天目掛け真下に振り下ろされた攻撃を刀で受け止めた。ギリギリと互いに迫る中、毘沙門天は阿修羅に顔を寄せる。「ただ力任せに振るうだけじゃあ相手は斬れない、…―――ってのは、どこのどいつが言ったもんだったか。帝釈天か?」毘沙門天のその言葉にぴくりとする阿修羅。毘沙門天はその反応を見逃さなかった。「…なるほどな。さっきの言葉、届いてなかったわけじゃなさそうだな。」「え…?」思わず真志が呟く。自我の有無は不明だが、毘沙門天の言葉は阿修羅の耳から脳へとしっかりと届いていたらしい。その内容か、もしくは『帝釈天』という名前か、どうやら彼の琴線に触れたらしかった。先ほどの冷静な様子とは打って変わり、奥底に眠っていた怒りと憎しみの感情が蘇ったことで、力任せに刀を振るっていたようだった。それを察すると真剣な表情に戻る毘沙門天。「本能的なもんか理性で感じ取ってるのか…。…ともかく、まだ囚われているようだな。」そして阿修羅は一度距離を取ると、すぐに再び毘沙門天へと向かっていく。猛攻撃で怒涛に斬りつけて来る阿修羅。毘沙門天はそれを冷静に、かつ隙無く受け止め、避けていく。だが、「!」その切っ先は、毘沙門天の腕や、脚を次々に掠めていった。「毘沙門天!!」「…」傍から見れば避けるので精いっぱい、という様子に見える。だが毘沙門天はそれに焦ることなく、淡々と攻撃に対応していく。深追いされないよう、用心しながら。そんな最中、毘沙門天は周囲にいる真志や人間達、妖怪達の気配を感じながら、ぽつりと呟く。「…お前にも譲れない、思いや目的があるのかもしれない。――――…だがな、」「!!」次の瞬間には、いつの間にか阿修羅の懐に侵入していた。猛攻の中、見極めつつ攻撃の隙を探していたのだ。「…ッ!!」「―――悪いが、」真下から上に斬り上げ、真っ二つにするとばかりに攻撃するが、ギリギリで躱される。「私も、民が見ている前で負ける訳にはいかないもんでな。」「…!」その攻撃がきっかけとなり、そこからは毘沙門天からの攻勢となった。阿修羅と同じく、怒涛の攻撃を開始する。それには、技術や能力が足りない部分を補うだけの、『意志の強さ』が込められていた。「!!」先ほどよりも激しい刀撃に、阿修羅のペースが乱される。これは、かつて天上で戦った記憶とは違う動きだ。この何百何千年、阿修羅が修羅界で戦っていたように、毘沙門天も戦いの経験を積んでいたのだ。それはすべて、民のため。「…私は福の神だ。私がいる限り、民に――――この町の住人に、危害は加えさせはしない。…絶対にだ。」「毘沙門天…、」そして次第に毘沙門天の攻撃が阿修羅に当たるようになる。腕を、肩を、腹を、次々斬りつけていく。そして――――「!!」毘沙門天の刀が、肩から腹部まで斜めに、深く阿修羅の身を切り裂いた。「…!!」直後、固まる阿修羅のその手から刀が零れ落ちる。刀は金属音を鳴らしながら地面を跳ねるように落下した。そして阿修羅は膝立ちになると、そのまま地面へと倒れこんだ。「…人間を狙ったのが、裏目に出たな。」汗をかき、息を切らしながら、倒れる阿修羅を見下ろす毘沙門天。暫く様子を見ていたが、阿修羅が再び起き上がる様子はなかった。それを見て、少し俯く毘沙門天。「…お前はかつてより弱い。こんな、力任せに振るばかりではなかった。―――…私は、お前達から太刀筋を学んだんだ。」少し切なそうな表情で、かつての同族を見下ろす。修羅界に飲まれ、ただただ戦うのみの日々を過ごしたことで、理性が消え失せてしまったのか。本能だけの獣は、理性のある戦闘者よりも劣る。「毘沙門天!!」真志が毘沙門天の元へ駆け寄ってくる。「大丈夫か!?」「私は問題ない。それより、狛虎とまりもの様子はどうだ。」「…皆、意識はあるよ。今、妖怪達が介抱してくれてる。」「そうか…。見たところ、おそらくそこまで酷い怪我ではないだろう。寿老人達が戻れば、気功術を使って少しは治療もできる。奴らの到着を待とう。」「本当か!?」「あぁ。」そう言って真志に向き直る毘沙門天。「真志、」「ん?」「…よくやったな。」「!」そう言って優しい笑みを浮かべる毘沙門天。「…お前の言ってた通りだったな。」「はっ、そうだろ。歳上の言うことはよく聞いておくもんだ。」「はいはい。…まさか、俺にあんな力があったなんてさ…。…でも、まだまだ足りねぇな。」「そこは今後の修行次第でいくらでも強くなる。」「…ありがとな、助けにきてくれて。」「…当然だ。」「めちゃくちゃかっこよかったぜ。」「…」「あんたはやっぱり俺の―――俺達のヒーローだ。」真志の笑顔を見た後、毘沙門天の目には石段の上から狐や小百合達がぞくぞくと降りて来るのが見えた。それを見て、毘沙門天も笑みを浮かべる。「…そりゃあ“毘沙門天”としちゃあ冥利に尽きるな。」そう言って踵を返すと、毘沙門天は阿修羅の方へと近づいていく。「…そういえばそいつ、どうするんだ?」「捕まえてみっちりと話を聞かせてもらう。…まぁ、話せる状態かもわからないが。それに天上にも送り返さないといけないからな。」その時だった。「うわッ!?」「!!」突然、強風が辺り一帯を吹きすさんだ。毘沙門天も真志も、思わず目を瞑る。まさか、と毘沙門天がはっとして目を開けるが、その視線の先から阿修羅の姿はいなくなっていた。「…は…!?」「!!…くそッ!逃げられた…!!」気配も感じさせずに、この毘沙門天や、大勢の人、妖怪のいる前から堂々と連れ去る度胸。並大抵の相手ではないことは確かだった。「…やっぱり、他にも協力者がいるのか…?」「…あぁ、間違いなくな。」「そしたらまた…。」「いや、おそらくこの町はもう大丈夫だろう。」「え?」「今後天上からの監視も厳しくなる。そんな状況で、リスクを冒してまでこの町に固執する理由はない筈だ。…それに、」そう言って石段の上を見上げる。「お前とあいつらがいるからな。」「真志くん!毘沙門天さん!」小百合と妖怪達が駆け降りてくると、二人のもとにわらわらと集まり出した。「すごかったよ!!かっこよかった!!」「助けてくれてありがとう!!本当にありがとう!!」「毘沙門天!!お前…あの頃も強いとは思ってたが、ここまでとは!すげー奴だなぁ!!」「あんなすごい戦い初めて見たよ!!ていうか阿形と吽形はなんなのアレ!?」「あの男の人怖すぎてちょっとチビっちゃったよ…。」わいわいがやがやと騒ぎ出す一行を見て、毘沙門天と真志が目を合わせる。「…ともかく今は、事態の収束と皆の無事を祝うべきところだな。」「…ははっ、そうだな。」その時だった。「毘沙!!」ぜぇぜぇはぁはぁと息を切らしながら辿り着いたのは弁財天だった。そして現場を見て目を丸くする。「えっ!?もう終わってる!?」「遅いんだよ!何しに来た!」「ご、ごめん!」怒鳴る毘沙門天と謝る弁財天を見て、皆が笑うのだった。
――――神社に避難していた人々を帰していると、寿老人達も神社に到着した。その後、神社の本殿で、阿形と吽形、そしてまりもの容態を確認していた。寿老人が真志に告げる。「…大丈夫だ。少し休めば良くなるだろう。」「本当か!?」「あぁ。私と福禄寿の“気”の力で、本人の生命力の増幅や自然治癒力の促進等も可能だ。すぐに良くなるだろう。」「…良かった~~…。」そう言って脱力したように阿形と吽形にもたれかかる真志。「3人とも俺が酷使しちまったからかと思って…。」そう言って二人の頭を撫でてやると、目を細めて嬉しそうに喉を鳴らす2匹。「あの状況じゃ仕方ないだろ。」「寧ろ皆、よく頑張ったよ。」「おかげでこっちは被害が無かったんだからな。」「…狐、お前もありがとな。」「当たり前だろ!」へへ、と得意げに笑う狐に微笑み合う真志と小百合。ぬらりひょんや猫又もまた、笑みをこぼれさせるのだった。「それにしても真志くん、本当に力を使えるようになったんですね。」「あぁ、驚いた。よく頑張ったもんだ。」「まさか…あんな短期間でね。」「大活躍だったね~!真志くん!」「かっこいいわよ!♡」「いやぁ…はは…。」歳上のお姉さん達に褒められ、照れ照れと頭をかく真志に、狐と猫又がにやつく。小百合は純粋に嬉しそうに微笑んでいる。「…ご心配おかけしてすみません、真志様。」布団に潜り込んだまま真志に謝罪するまりも。「何言ってんだよ!俺と、皆のために頑張ってくれたんだろ!…ありがとな、本当に。」「いいえ!…寧ろ、自分の力不足を痛感致しました。真志様を危険な目に遭わせてしまうなど…。毘沙門天様の到着が遅れていればどうなっていたことやら…。その上毘沙門天様には遠く及ばずに…。」目の前で高度な戦闘を目の当たりにして、力量との差をまざまざと見せつけられ、落ち込むまりも。「おいおい何言ってんだよ!そりゃああっちは何百何千年戦ってるわけだからな。でもまりもはたった数日でだぞ!?十分すげぇよ!」「…ありがとうございます…。でも、私、次からは一人でも真志様をお守りできるように、今後は毘沙門天様ほどのお力をつけるべく、修行して参ります!」「…そ、そうか…。」そのあまりの気迫に気圧される真志。その気持ちは嬉しいが、まりもがあんな風になったらちょっと怖いなと思うのだった。「ところで、吉祥天は?」「…天上の奴が来て、引き渡した。」「えっ!?もう来たの!?ていうか『降臨禁止令』は!?」「こんな事態になったんだ、そんなものはもう不要だろう。…時代は変わった。天上も、変わるべき時が来たということだ。」「調査隊が派遣されてくるらしい。暫くは町に警護もつけるとか。」「…そりゃ安心だ。」ほっと胸を撫でおろす真志と町の住人達。「だが、結果的に民達を守ったとしても、規則は規則だそうだ。禁則事項を破ったことについては後で呼び出しが来るだろうな。寿老人に。」「!?何故私なんだ!?呼び出すとすれば、そもそもの原因である毘沙門天、貴様だろう!!」「『七福神の責任者は寿老人だから寿老人に頼む』と言ってある。」「貴様勝手なことを…!!」「…でも、破ったのは私達全員なので、結局はお呼ばれしそうな気もしますが…。」「あはは、聞いてないよ、アレ。」騒がしい日常が戻って来たのであった。
――――「黒闇天の時と同じだ。」七福神達は山を歩いて登りながら、互いの情報を共有していた。毘沙門天が阿修羅が消え去った時の状況を伝えると、大黒天が白状する。「えっ?それは逃げられたってこと?」「…」「えっ!?天下の大黒天が!?」「お前ら殺すぞ。」いじる恵比寿と弁財天にいつもの笑顔を張り付けたまま暴言を言い放つ大黒。「…穴の存在を隠した奴といい、相当の手練れだろうな。」「…だけど、騒動の時は一度も顔を出さなかった、かぁ…。」「ほんと、何を企んでるんだろう。」「これで終わりとは思えませんね…。」「…情けないけど、結局主犯が誰かも、目的もわからなかったね。殆どの妖怪は、ただ利用されただけみたいだし。」「吉祥天がどこまで話してくれるかと、調査隊に任せるしかないね。」「…」どこか考え込む大黒天。「どうした?」「いや…」話している内に、やがて『混所通道』があった場所に辿り着く。その光景を初めて目にした4人は絶句する。「あ~あ…。」半分になりボロボロになったかつての居住船を眺めて言葉を失った。「…せめて、お気に入りの小物とかだけでも出しておけば良かった…。」「お菓子もまだ食べてないやつがあったのに…。」「あーん、折角の可愛い服が~~~…。」「そういえば金は?」「それだけは確保しておいた。」「流石…。」「山積みになってた書類が跡形もなく消えちまったのは何よりだな。」「それはそう!」「全くお前達という奴は…。」思い思いに失われた宝船について呟いていると、恵比寿が口を開く。「…思い出の物とかは無くなっちゃったけど、」恵比寿の言葉に全員の視線が集中する。「皆が無事で良かったよ。…民も、皆も、…毘沙門天も。」そう言うと、次の瞬間には皆口元に笑みを浮かべていた。それを皮切りに切り替える。「あーあ、また作り直しかー。」「千何百年ぶりかなぁ?作り方忘れちゃったよ。」「またガミガミは嫌よ?寿―ちゃん!」「お前達がちゃんとやれば私だって何も言わんぞ!」「どうせなら、もっと今風の装飾にしよう!!もっと可愛いやつ!」「そうですね!前よりも良いものにしましょう!」「あんまり派手なのは勘弁しろよ。」
その後、七福神達が山を降りて神社に戻ると、宴の準備がされていた。しかも前回よりも豪華になっている。「ま…また無理してないか…?」「何を仰いますか!!そんなこと気にせずにほら、皆さまお座りになってください!!」「あれだけの脅威を解決してくれたんです!!寧ろこれでは物足りないくらいですよ!!」「…本当に、ありがとうございました!!」そして七福神達に向かって真志や両親たち、小百合や妖怪達もこぞって礼を言う。それに対して笑みを浮かべ、各々席に着く七福神達だった。「猫又と座敷童もよく頑張った!」「すげえなお前ら!!」「まぁ俺にかかれば楽勝よ!」「そんな大役…座敷童ちゃん、すごいよ!」「えへへ…。」「壊れた宝船、俺達が修理手伝ってやるよ!」「ほんとに!?助かるよ~!」「ボク達も恩返ししたいんだ!」楽しい宴に、毘沙門天は優しく微笑みながらその喧騒を噛み締めるのだった。


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