【2話】宇宙生物の襲撃②


奥には山脈が連なり、青々とした果てしない草原と、薄い黄緑色の広大な空が広がる風景の中。草原には、バイソンのような見た目をした、成人男性ほどの高さがある生物が数体いた。そして、その背中を撫でながら佇む、ユェルとメルドの姿もあった。ふと何かに気づいたように、ユェルがはるか遠くの空の果てを見つめる。霞んだ空の向こうには、巨大な惑星の影が。そして、その奥からやってくる、“ナニカ”。
――――「――――…」ふと自分の寝床で目を覚ましたユェル。ゆっくりとベッドから体を起こして、暫しぼうっとする。
――――「おはよう。」ユェルが準備を整えていつもの憩いスペースに行くと、既にメルドがカップ片手に新聞を読んで座っていた。声をかけられ、ユェルも挨拶を返す。「…おはよう。」ユェルの様子を見て新聞から顔を上げるメルド。「どうした。珍しく目覚めが悪いみたいだな。」いつもの定位置である、メルドの前に腰を降ろすユェル。俯きながら、その問いに応える。「…悪夢を見たの。」「悪夢?」メルドが訝しげに眉を潜める。「……昔の。」その言葉でその意味を察したメルドは、取り繕うように再び新聞に目を落とした。「…何十年前の話だよ。」「…本当ね。」メルドの言葉に、思わず渇いた笑いを浮かべるユェルだった。
そんな二人のもとに、次々と仲間達が現れる。メルドと同様に新聞とカップを手にしたヤオロア。伸びをしながら欠伸を出してやってきたノーディス。そして、トレーに食事を載せたムエラも現れた。ムエラの手にするそれを見て、はたと思い出すノーディス。「そういえば私もそろそろ食事摂らないとなー…。」「…」ノーディスの言葉に反応もせずに、どこか浮かない顔をしながら、ムエラはトレーをテーブルの上に載せた。その表情と置かれた料理を見て察するメルド。「お前まさかそれ…。」メルドの言葉を契機に、皆の視線がムエラに集まる。ムエラも察しがいいな、と言わんばかりにそれを肯定した。「そうだ。朝、博士に渡された。」その言葉で、場に緊張が走る。ヤオロア「まさかこの前の巨大化け物か…?」ノーディス「本当に料理にしたの!?今回は無いと思ってたのに…!」ユェル「なんかお腹壊しそうな見た目してるけど…。」そうは言いつつも皆興味津々そうに覗き込む。黒く鈍く光る肉の塊のようなそれが皿の中心に載せられていた。周りには、申し訳程度に野菜が添えられている。メルド「…まぁ、調理班の腕は間違いないだろうがな…。」ノーディス「そうは言っても限度があるでしょ…。」皆のコメントを聞きながら、ムエラはフォークとナイフで化け物肉を切り始めた。中から奇妙な汁が溢れ出したのを見た時、皆おぞましい物を見るような目線を送った。だがムエラは構わず肉を口に運ぶ。数回咀嚼して味わってみる。だが、ムエラの表情は晴れなかった。「…なんか……ぐにぐにして…なんだろうな、食感といい味といい…最近食べたもので言うと…”椎茸”を苦くしたものに似てる。」ムエラの感想を聞いて、皆どこか納得したような様子を見せる。ノーディス「あたし絶対食べたくない。」ユェル「…まぁ…まだましな方じゃない?」ムエラ「栄養価は高いと言ってたぞ。体には良いんじゃないか。」だがそこにヤオロアが一石を投じる。「考えたらそいつら、ビルとかガードレールとかも食ってたろ。海中でも何食ってたかわかったもんじゃねえぞ。」ヤオロアの言葉に途端に青い顔になるムエラ。ユェル「で、でも博士がちゃんと調べてOK出したんだから安全なものには違いないわよ!」メルド「加工と抽出もしてるだろうしな。」ムエラ「久々の食事がこれか…。」フォロー虚しく、不憫になるほど落ち込む様子を見せたムエラに、皆励ましの言葉をかけた。「昔の…ほら!あの虫みたいなヤツよりはましじゃない!節足動物みたいな!」「あぁ…アレが一番最悪だったな…。」「あの時は長期間食事が摂れなくて、適合も上手くいかない環境だったし、とにかくエネルギー摂取のため!ってやむを得ず食べたのよね…。」「ニセコが盛大に吐いたやつか。」「そうそう!」そこで皆がはたと気付いた。「そういやニセコとホウリィは?」「またいないの?」

ニセコ「ん~~~~♡♡♡美味ひぃ~~~♡♡♡」ホウリィ「もう…。勝手にこんなところに来ちゃって…。皆怒るわよ?」一言目を発した茶髪で長い髪をした快活な女性はニセコ、もう一人の金色の長い髪を束ねた、おっとりとしたタレ目の女性をホウリィといった。ニセコとホウリィの二人は、日本のとある町外れの小さな喫茶店を訪れていた。「別にいいじゃないですか。呼び出しがあったら行けばいいだけっすよ!そのために朝早く来たんだし。っていうか、そう言いながらもホウリィさんだってちゃっかり食べてるじゃないっすか!」そう言ってニセコは手にした長いスプーンでホウリィを指す。「だって…目の前でこんなの食べられたら我慢出来なくなっちゃうじゃない…。」そんな二人の前には、それぞれ大きなパフェが置かれていた。「あははっ!ここの”パフェ”、何度食べても美味しいですからね!!」「…食べられなかった時期のことを考えると考え深いわね…。だからってあんまり食べ過ぎるのは駄目よ?体にどんな影響が出るかわからないんだから。」「わかってますって!」そう言いつつもぱくぱくと頬張っていくニセコ。「いや〜しかし、食べ物の種類が豊富で、しかも美味しい!ってのは、この星にいられる一番の理由になりますね!!」「もう、ニセコったら…。」心の底から嬉しそうなニセコの様子に、仕方ないと笑うホウリィの目は優しかった。二人が談笑しながらパフェにありついていると、二人の女子学生が近寄って来た。「あ、あの…!」ニセコ「ん?」ニセコとホウリィがパフェを頬張ったまま振り返る。「二、ニセコさんと、ホウリィさんですよね…!?」その問いかけに二人は一度目を合わせると、笑みを浮かべて女子学生の方へ再び振り向いた。「そうっす!」「…!!」その言葉を聞いて女子学生は嬉しそうに、互いに目を合わせた。「きゃーーっ!!本物だ!!」「あ、あの!!ファンです!!握手してください!!」「え〜?へへっ、まいったなぁ~。」照れたように手を差し出すニセコ。「嬉しそうね。」「まぁ好いてもらえるのは悪い気しないっすよね!」「ふふ、そうね。」そうして少しばかり話をすると、女子学生は満足したように自席に戻っていった。「そしてどういうわけか“女の子”にモテますよね。」「この星の”女の子”って平均身長が低めで、『背の高い』子に憧れる傾向にあるみたいだから…そのせいかしらね?」「ね。私達にはわからない文化っすね。」「色々あるわよね、環境の違いって。」「ん!この前行った星なんて――――」そんな風にパフェを食べながら話を続けていると、ニセコの手首に付いていた腕時計のような装置がピコピコと反応する。「あ。呼び出しっす。」そして画面に表示される文字を読み始めるニセコ。そんなニセコに問いかけるホウリィ。「私達に?」「はい。」「場所は?」「アメリカの―――…ニューヨーク…っすかね。」その単語を特に気に留めることもなく、ホウリィは颯爽と立ち上がった。「そう。ちょうど食べ終わったことだし、早速行きましょうか。」ニセコも残った飲み物を飲み干してから立ち上がる。「店長!お会計お願いしまーす!いつもの通り、めちゃくちゃおいしかったです!!」
―――――会計を済ませた二人は足早に店を出ると、近くの空き地に移動した。そこには、無機質な装甲が張り付けられた、車にも船にも似た乗り物のようなものが停泊していた。周囲には人々がまばらに立っており、興味深げにそれを眺めている。「目立ってる!!」「そりゃそうよ…。」そして乗り物の周りを歩きながら人々へ声をかける。ニセコ「危ないですから、近寄らないでください!下手したらバラバラになりますよ!」ホウリィ「周囲15M以内には立ち入らないでくださーい!」二人で呼びかけながら人々を遠ざけると、運転席へと乗り込んだ。そこには様々な計器のような物が着いている。「座標はどこっすかね?」「待って。入れるわ。」「エンジンかけますね。」そうしてホウリィは腕時計のディスプレイに映し出された情報と見比べながら、運転席のパネルを操作して、細かく情報を入力していく。「結構町中みたいね。」「どっから来たんすかねー。この前みたいに海からとか?」「どうかしら…。」「あー…もうやばいっすよ。被害とか出てるみたい。」「入れたわ。急ぎましょう。」そうしてハンドルのようなものを握ると、激しい轟音と振動が鳴り響き、機体が数十cm宙に浮く。周囲に激しい空気の波が押し寄せる。そしてその数秒後、機体はその場から姿を消した。
―――――「うわー…やばいっすね…。」ニセコとホウリィはニューヨークの町中に辿り着いていた。二人が駆けていく視線の先では、体長1.5Mほどの大きさの、小型の恐竜のような体に蛙のような頭をした生物が多数、暴れ回っていた。人を襲い、車を破壊し、ビルの窓を割り―――…など、好き放題だ。逃げ惑う人に、抵抗する人、銃で抵抗する警官と、場は混沌を極めていた。「早いところ行くわよ。」「じゃあホウリィさん左からお願いします。」「えぇ。右はお願いね。」そして躊躇無く駆け出していく二人。ムエラ達が使っていたような、例の剣のような武器を使い、怪物達を瞬殺していく。あまりに早く無駄のない動きで斬られた個体は、呆気なく倒れていく。人に襲いかかっていた個体に気付くと、ニセコが咄嗟に斬りつけ、事なきを得た。「大丈夫っすか!!」「…えぇ…!」あっという間に数を減らすニセコとホウリィの強さに、集団は野生の防衛本能が働いたのか、突如同じ方向に向かって走り出した。「あっ!!逃げますよ!!」「行きましょう!」車を追い越すスピードで道路を走って逃げだす怪物達。ニセコ達もすぐさまそれを追う。ニセコ達もその集団に引けを取らない驚くべきスピードで、ダッシュで車を追い越しながら、周囲の車や人にぶつからないよう注意しつつ怪物達を始末していく。時には飛んで車のルーフに飛び乗り、更に先へ飛び出す。周りの人間達はその光景を見て驚愕する。ホウリィ「あれが親ね。」一番前を走る他より少し大きな個体を見つける。「やっちゃいますよ!」その言葉にニセコは更にスピードを上げて、一気に距離を詰める。高く跳躍してから、飛び降りながら手に持つ武器で斬りかかった。が、「いッッ…~~~~たぁ~~~!!!!」首目掛けて武器を振り下ろしたが、刃は硬い皮膚を通らず、一切斬れることなかった。後ろに飛んで道路上をスライドする。ホウリィは近くにいた個体を始末しながら問いかけた。「大丈夫?」「あいつ!!めちゃくちゃ硬いっす!!めっちゃしびれてる…!!」「これでもダメってよっぽどね…。」”これ”とは、彼女達が手に持つ武器のことを指していた。だがニセコは動揺することなく、冷静に呟いた。「でも、派遣されたのが自分で良かったっすよ。」「それも見越してたんじゃないかしら。」「そうかもしれないっすね。」「お願いね。」「任せてくださいよ!」そしてもう一度駆け出すニセコ。その時、立ち止まった親個体がニセコの方を向いたかと思うと、大きな口を開け、その中で光を宿した。それを見た瞬間、ゲッとニセコが顔を引き攣らせる。慌てて周囲を見渡すが、いつの間にか人はいなくなっていた。直後、エネルギーの塊のようなものが発出される。ニセコは間一髪でそれを避けた。「そういうのもあるんすか…!?」ニセコは親個体へ真っ直ぐ直進をやめ、迂回して走りながら二発、三発目の攻撃を避けていく。ニセコが避けたエネルギー弾は、ドン!ドン!と大きな音を立てて背後のビルや柱に当たっては破壊していく。車などの物陰に隠れながら、徐々に距離を詰めたニセコは突如急停止すると、逆側に反転して避ける。と、すぐさま一気に距離を詰めた。親個体手前で横から首めがけて振ろうと武器を握り込む。その合間、ニセコは真剣な表情、化け物を射貫くような眼差しで何か暗号のようなものを呟いた。そして最後に、「“  ”」と呟く。直後、剣を振り抜いた。すると、先ほどとは違い、剣身はぬるっと親個体の体に入り込むと、そのままその首を切り落とした。
―――――「お疲れ様。」ホウリィが近づくと、ニセコはどさりとその場に座り込んだ。「は~~~~…。ほんとっすよ…。他の個体は?」「もう片付いたわ。」「流石っすね…。」疲れを見せないホウリィの様子に、最早呆れるニセコ。「ニセコだって凄かったじゃない。」「そうっすかねぇ…。」「そうよ。」ふと周囲を眺めるボロボロに破壊された町の様子が目に入った。警察や消防、軍隊が駆け付け、対処に追われている。救助活動が始まったようだ。「大丈夫かな…。」「どうかしら…。被害が大きくないことを祈るしかないわ。」「そうっすね…。…にしても、なんでまたあんなに沢山…。」その時、二人のインカムに音声が入ってきた。『ご苦労だったな、二人とも。』「博士!」「お疲れ様です。」『おかげで今回も捕獲が出来た。これで研究が捗るぞ。』「流石に今回は食べないっすよね…?」『さてな。』「無理っすよ!!めっちゃ硬かったすもん!!」『中身の肉はわからないだろう。』「もしかして博士、自分が食べてみたいだけじゃ…?」「博士、今回の個体はどうやって地上に降りてきたんですか?」『あぁ、おそらく先日降ってきた隕石に紛れてやってきた可能性が高い。』「あら、そういうこと?」「ほんっと、あの手この手で来ますね…。」そして博士と少し話した後、通信は切れた。「いい加減、探査機の精度上げらんないっすかね。」「うん…。地球の大気構成とか、重力、磁場とか、そういう影響もあるみたいで調整が難しいみたいよ?設置場所もまだまばらだし…。セイドもその辺りは『交渉する』とは言ってたわね。」「…にしても、早いとこ正常運転してもらわないと…。」そんな二人の元へ、一人の軍人が近づいて来た。「化け物退治、感謝する。」「いいえ。これが仕事ですから。」「あの素早く軽やかな身のこなし…素晴らしかった。特に君、親個体への効率的な対処、見事だった。」「え?へへ…ありがとうございます!まあでも先輩方に比べたら私なんてまだまだですよ。」「ふふ。」ホウリィもニセコが褒められて嬉しそうな様子を見せた。「ところで良い機会だ。気になっていたことを聞いてもいいか?」「なんでしょう?」「あの犬みたいなロボットは…掃除ロボットか何かかい?」軍人は、怪物の肉を貪り食う犬型ロボットを指した。それに対しホウリィが答える。「まあそれも兼ねてでしょうか。本来の用途は、成分分析と燃料確保です。ああして取り込んだ肉体をうちの”生物研究班”の博士が解析して、生物研究に応用しているんです。あと、必要な成分のみを抽出してエネルギーに活用したりもしてるんですよ。」「他にも生きた検体も数体確保して、その生態とか体内構造を解明することで、私達の生活だとか技術に活かしたりってこともしてくれてますね。まぁ、用済みになったら次の日の朝食になったりするんですけど!」「そ、そうか…。」「こら。ちょっと引いてるじゃない。」「いや、そうっすよね。それが正常な反応すよね。私達もたまに引きます…。」ニセコは気を取り直して軍人に呼びかけた。「そうだ、なんか手伝えることあります?」「え?あぁ、だが…君達の仕事は、」「少しくらい大丈夫すよ。ね、ホウリィさん。」「そうね。」「それは助かる。なら、手を借りてもいいか。」「はい!で、どうせならなんかまた美味しいもの食べていきましょうよ、ホウリィさん!」「もう、ニセコったら…。」そうして人々の元へと駆けて行くのだった。

ニセコ達が事態を解決してから少し経った頃。基地の憩いスペースにはノーディスともう一人、黄土色の髪をまとめた女性がテーブルに頭を突っ伏していた。「セイドさんまだ戻らないのかな~~~…。」彼女の名はケォンといった。技術班の一人だ。ノーディス「暫くはまだ忙しいみたいよ。」ケォン「うぅ……会いたいよ〜…。」そんな二人の元へ、二つの影が現れた。「お疲れっす〜。」「お疲れ様〜。」「あら、お疲れ様。」「ニセコにホウリィさん。お疲れ様です〜。」ヘロヘロになったニセコはノーディスが座るソファの隣に寝転がった。「ちょっと!」「もう疲れたっすよ〜。」「褒められて調子に乗るからよ。こんな遅くなっちゃって。」「こっそりパフェなんか食べに行ってるから呼ばれるのよ。この前だって…」「この前のは違うって言ったじゃないですか!探査班に呼ばれて見に行ったんすよ!!列記とした仕事!!」「そうだっけ?で、今日は?」「パフェ食べに行ってました!!」「合ってんじゃない。」そしてニセコはケォンの存在に気づくとがばりと起き上がる。「ところでケォンさんじゃないですか!早いとこ探索機の精度あげてくださいよ!」それに対しケォンは困ったように答えた。「そうは言ってもねぇ…。地球全体の探査となるとなかなかどうして難しくて…。それこそ今、セイドさんが色々交渉してくれてるだろうからさぁ…。」「まぁ、技術には時間がいるってことね。」「でも、全部が全部かいくぐられてるわけじゃないんだよ、一応!ほら、見てこの記事!」そう言ってケォンはタブレットを操作し、とあるネット記事を表示した。「『探査機能向上により、翅の生えたドラゴンのような宇宙生物を地球外で事前に発見』――――しかも見てよこれ!『”特殊防衛部隊”所属の技術班と共同開発した迎撃機により、上空××メートルで敵を撃墜』!!『なお、太平洋上であったため人的被害は無し』!!」ノーディス「あーそれね。生物研究班が回収大変だったとか言ってたやつ。」「ぐっ…。ま、まぁそれはそれとして…。ともかく!私達技術班とセイドさんで技術提供して実現したんだから!技術は日々進歩してるってこと!!だからじきに探査機も改良が進むよ!」ホウリィ「ちなみにね、今日の敵、ゾイロでも斬れなかったの。」ケォン「えぇッ!?マジですかそれ!?」ノーディス「えっ?確か銀河最強硬度じゃなかったっけ、この素材。」ケォン「そうですよ!!しかも更にそれを加工してあの硬度ですからね!?あぁ〜…また改良が必要だ…。」ノーディス「”技術は日々進歩”なんでしょ。」ケォン「勘弁してくださいよ!!仕事溜まってるんですよこっちは!!セイドさんから頼まれてるのもあるし!!」ニセコ「当の本人が不在っすからね〜。」ケォン「ほんとだよ!!取り敢えず急ぎの報告はしたけど!!も~~早く帰ってきてくださいよ~~~!!」
――――「?」何かの気配を察知したように振り返るセイド。「どうしたんですか、セイドさん。」「いえ。」「では、こちらへ。」「えぇ。」

とある山奥に辿り着く調査員とその助手。何やら巨大装置や、テントの中に機械が設置されている。「どう?」主任が問いかけると、その場にいた担当者がそれに答える。「順調ですね。60%は調査が完了しています。」「くれぐれも慎重にね。」「はい。」そして主任は振り返って、今度は助手に問いかける。「そういえば、例の件。あと不足してる鉱物はなんだったかしら。」「それについてはあのバカに別途手配させてるみたいです。我々はここの調査が完了すれば、あとは通常通り進めればよいだけかと。」「そっか、ついでに行けるものね。」「!」その時。助手が何者かの気配を感じて振り返り、咄嗟に手に持っていた銃のような武器で青白いレーザー光線を放つ。主任は動揺することもなく、状況報告を求める。「なんだった?」「…“クマ”…でしたっけ、アレ。」「あら…。」二人の視線の先では、体に穴が開いたヒグマが倒れていた。そしてレーザーが通過した軌跡では、木も、岩も、全てぽっかりとした穴が開いていた。「…うっかり人に当たったら危ないわ。くれぐれも気を付けてね。」「…一応気を付けてはいるので問題ありません。…だが、この星は何もかもが密集し過ぎだ。」そうして、特に気にもしない様子で再び確認を進めるのだった。