◆18話その後
その日の夜。兵舎のベランダで夜風に当たるオレリアの元へ、ブローニャが訪れた。「オレリア。デジャを助けてくれてありがとうな。」ブローニャの言葉に、何故だか呆れたような顔をするオレリア。「お前らなぁ…。」「?」「さっきデジャにも言ったけど、お前ら律儀すぎなんだよ!デジャがあの女に突っ込んでくれたから私は深追いされなかったし、ヴィマラも無傷で済んだ。お互い様だっての!」「!」「それになぁ、私はお前らより"年上のおねーさん"なんだから、当たり前のことなんだよ!一々礼なんか言うな!」そんなオレリアの言葉にブローニャが笑う。「そうか。それなら失礼したな、"おねーさん"。」「そうやって素直に受け取っとけばいいんだよ。」そんな2人の元にバシリアが現れた。「どうだ、具合は。」オレリアはあっけらかんと答える。「まあまあってところだな。処置が丁寧だったから、意外と早く治るかもな。」「私は大した傷じゃない。」「そうか。」2人の返答を聞いて、顔に翳りを帯びるバシリア。「…すまなかったな。」「…おいおいお前もかよ。」責任感強いやつばっかだな、と再び呆れるオレリアに対し、バシリアは申し訳なさそうに続けた。「私自身があの場で大したことを出来なかったのもそうだが…。……反省しているんだ。必要以上にお前達を脅しつけてしまったんじゃないかってな。」「!」「あの2人に対する評価については、私が実際に対峙して感じたありのままの見解だ。…だが、それによってお前達を萎縮させてしまったんじゃないかと…それがあの結果に繋がってしまったんじゃないかと思ったんだ。…正直なところ、デジャなら或いはとも思っていたんだが…。」もしかしたらデジャほどの腕前であれば、ヒルデを無力化できるのではと思っていた。だが結果として、みすみす逃してしまった。それを聞いて、ブローニャがきっぱりと言い放った。「デジャは、そんなことで臆するような奴じゃない。」「!」「何か別の要因か―――オレリアが負傷して、若干動揺したのはあるかもしれない。単純な実力不足だとは、私も思えない。私もデジャなら対処できる力を持ってると思ってる。」「…!」「そしてバシリア。お前の情報のおかげで、私達はそれぞれが自分の出来る"最善"を考えて行動し、対策を打つことができた。それがなければ、被害はもっと大きかったかもしれない。―――何よりお前は、ヘザーをあの女の手から救ってくれたじゃないか。お前はいつも、私達の身の安全を第一に考えて、言葉と行動をくれる。私達にとってはそれで十分だし、ありがたいんだ。あとのことは、私達が自分でどうにかすべき課題だ。」そう言ってブローニャは強気な笑みを浮かべる。それを見て、バシリアもようやく表情を緩めた。バシリアもバシリアで、自組織の人間ではないブローニャ達を巻き込んでしまったという、責任や罪悪感を心の何処かで抱えていたのだ。ブローニャもそれを察していた。「大丈夫だ。お前が気に病むことはない。そしてそれは、これからも同じだ。」気遣うブローニャと、気持ちは同じだと言わんばかりのオレリアの表情を見て、バシリアは、ふっと口元に笑みを浮かべる。「……すまなかったな、変なことを言って。」「全くだよ。」オレリアの悪態に2人も笑った。
―――「今回の件で、敵の幹部から明確に『欠片を狙っている』という言葉が聞けたからな。戻ったら、他の隊長たちにも共有するつもりだ。もっと力を入れて対応してくれることだろう。…特にローザはな。」「…」バシリアは勿論のこと、これだけ証人がいるのだ。ブローニャとオレリアも、信じてもらえることを願う。「今回は奴らの意図する通りの展開になってしまったのかもしれない。…だが、次は無い。」バシリアの真剣な目に、ブローニャとオレリアも応える。「あぁ。」「当たり前だ。借りは返さなきゃ気が済まねぇからな。」そうして3人の決意新たに、夜は更けていくのだった。