【19話】欠片探し④ 問題と解答


ヒルデとスーシャの急襲により数名が負傷したため、傷が癒えるまでの数日間は町に滞在することになった。「遺跡の場所に、ある程度の目星がついた」町民への聞き取りの結果、遺跡がありそうな地域までは絞り込めたものの、具体的な在処までは特定することが出来なかった。そのため、無傷組(チェリ、ヘザー、ヴィマラ、バシリア)とバシリアの部下数人が、先行して現地調査をすることになった。「私も行けるぞ。」「私もだ。」ブローニャとデジャの申し出を、チェリが仁王立ちで却下する。「負傷者は留守番!!」そしてそれにバシリアが補足する。「デジャ、お前は思ったよりも傷が深い。傷を早く癒すためにも、無理はしない方がいいだろう。ブローニャ、お前には居残り組の看病と保護を頼みたい。」有無を言わせないバシリアの言葉に、デジャは頷き、ブローニャも「…わかった。」と渋々了承する。チェリとヘザーが心配なのだろう、それを察してバシリアが笑う。「なに、遺跡の場所はここからそう遠くはないみたいだからな。今日中には必ず一度戻ってくる。もし遺跡を発見して、私達だけでは攻略が難しそうであれば、また改めて皆で行こう。」その言葉でブローニャもようやく頷いた。そしてオレリアもオレリアで、ヴィマラを行かせることをずっと渋っていた。自分の目の届かないところで危険が及ぶのではないかと心配しているようだ。だが、ヴィマラとバシリアの説得により、ようやく折れたのだ。オレリアがチェリ達の方を見る。「チェリ、ヘザー。」「ん?」「ヴィマラを頼む。」オレリアの真剣な眼差しに、明るく答える2人。「もっちろん!」「任せとけって!」それを聞いてヴィマラが不服そうに呟く。「寧ろ私が2人を任される立場じゃないの…?」「お前全然戦力にならねぇし、サバイバル力も無いだろうが。」「うっ…。」珍しく言い負かされるヴィマラに、皆笑った。「町民たちの話を信用すれば、どうやらあのあたりは盗賊や悪党どころか、人自体が寄り付かない土地らしいからな。なんせ、荒野と谷ばかりの"何もない"場所だ。誰も好き好んで行かないというし、お前たちが心配しているような事態にはならないだろう。」その言葉を聞いて、居残り組は少し肩の力を抜く。「くれぐれもはぐれるなよ。食料と水は持ったか?」「危ない場所には近寄るんじゃないぞ。」「ちゃんとバシリアについていくんだぞ。知らない人にはついて行くなよ!」「ちょっと!!子供扱いしないでよね!?」「そのくらいあたし達だってわかってら!!」「私まで同じ扱いってどういうこと!?」保護者と子供達のやり取りを見て、ジタが苦笑いを浮かべていた。「子離れしろよ…。」
――――そんなこんなで見送られたバシリア達一行は、馬で移動し、1時間ほどで目的の地域に到着した。馬を降り、風景を見ながら呆気にとられるチェリ達。広大な荒野の中に佇む渓谷は、30M以上はあろうかという崖が連なる。植物は殆ど生えておらず、生き物の姿も見られない。景色が圧巻ではあるものの、観光地とするには些か不便で物足りない様子に、確かにこれは人が訪れる理由が無いだろうと納得させられる。「…まさか、これを片っ端から調べろって言うんじゃないわよね…!?」「うーん…。」「…なんか、結構広そうだな…。」ヴィマラさえ若干引いていると、バシリアが腕を組みながら呟いた。「…町の人の話では、古くから『神の指差す先に遺跡がある』という言い伝えがあるらしいが…。」「『神の指』…?」「何よそれ!?」「そんなもんどこにあるんだよ!」「それなんだが…。本来ならその前段の文章もあったらしいが、それを記した壁画が崩れ落ちてしまったみたいでな。それ以上のことはもうわからないらしい。もしかしたら具体的な在処についての記述があったのかもしれないが…。」「じゃあやっぱり虱潰しじゃん!!」「まじかよ…。」「これは時間がかかりそうですね…。」早くも嫌になっているチェリ達を見て、バシリアが明るく笑う。「あはは!まぁそう肩を落とすな!皆で探せば意外と早く見つかるかもしれないぞ!苦労して探して見つけた時ほど、達成感があるというものだ!」「無茶言ってくれるな…。」「あんた達も大変ね…。」チェリがバシリアの部下に同情する。「ま、まぁ…。でも、悪い人ではないので…。」「それはそうだけど…。」「…ともかく、探してみないことには仕方がないわ。ここまで来たんだし、頑張りましょう、チェリ、ヘザー!」ヴィマラの前向きな鼓舞に、2人は諦めたようにため息をついた。「…まぁ、もしかしたら欠片があるかもしれないしな…。」「はぁ~~~しょうがないか!取り敢えず頑張ろ!!」無理やりやる気を出す2人。「手分けして探した方がいいわね。」「あぁ。だがあまり離れても危険だ。まずは地域を絞って探してみよう。何か手掛かりがあれば、すぐにでも共有してくれ。」そうして皆で捜索を開始するのだった。
――――一方その頃待機組は…。ブローニャ以外の3人がベッドに寝転びながら会話をしていた。「今回の遺跡って、そもそも手記にはなんて書いてあったんだっけか?忘れちまったよ。」ジタの問いかけにオレリアが答える。「確か…『実際に欠片があるかはわからないが、遺跡の先に宝があるとされているらしい。だが、誰も辿り着くことができないようだ。』だとか、そんな感じだ。」それにデジャが眉を顰める。「…随分ふわっとした内容だな。結局その手記を書いた奴も、遺跡を見つけることすらできなかったんだろ。…そう考えると、かなり骨が折れそうだな。」「あぁ。しかも目印のヒントも頼りないときた。正直、相当時間かかるだろうな。」「…見つけたところで、欠片じゃない可能性もあるんだもんなー…。」「まぁ少しでもあるなら、賭けるしかねぇわな。」デジャはふと、自分のベッドの脇で、何やら支度をするブローニャの姿に気づいた。「…お前、何してるんだ。」「ん?飯を食わせてやろうかと…。」そう言って、片手に御椀を、もう片方の手にスプーンを持つ。デジャに支給された食事を、所謂「あーん」で食べさせようとしていたらしい。「いや、いらない。そのくらい自分で出来る。」冷静に真顔で断るデジャに対し、しゅんと落ち込むブローニャ。「そうか…。」「いや、なんでそんな残念そうなんだ…。」「デジャが負傷なんて珍しいし…。何か私でも出来ることをと思って…。」「…その気持ちはありがたいが、大丈夫だ。別にそこまで重傷ではないし…。寧ろ他のことでお願いしたい。」「そうか…。」あわよくばこの機会を利用して、デジャに甘えさせようとしていたブローニャだったが、計画は失敗に終わったようだ。「なぁブローニャ、俺腕上がんないから飯食わせてくれよ。」そんなブローニャに対して、少し離れたベッドからジタが呼びかける。だが、ブローニャはそれを冷たくあしらった。「何甘えてるんだ。お前は自分で食え。」「えっ…?なんか俺には冷たくね…?」「ブローニャ、私も~。」今度はオレリアがベッドに寝転びながら手をひらひらと動かす。「お前も自分で食えるだろ!」「えっ…私こいつと扱い同じなのかよ!?」「デジャにだけ甘いのか…。」大人2人をあしらった後に、デジャへ向き直るブローニャ。「じゃあ他に何か食べたいものは無いか?りんごでも剥くか?欲しいものがあれば持ってくるぞ!着替えも手伝ってやろうか。」お節介焼きになりつつあるブローニャを、デジャは反抗期の娘の如く拒絶する。「あーあー、いい、いい!お前は過保護な母親か!?」その時、自分で放った言葉に、ブローニャがはっとする。「そうだ。着替えと言えばオレリア、手伝ってやるぞ。」「は!?…いや、それはいいよ。」オレリアは先ほどとは打って変わって、恥ずかしそうに苦い顔をする。「その足じゃあズボンも履き替えるのが大変だろ。」「いいって。」「何恥ずかしがってるんだ。女同士なんだし、別に気にすることないだろ。」「女同士だろうが恥ずかしいもんは恥ずかしいんだよ!」「なぁ、俺は?」「お前は自分で出来るだろ。」「なんでだよ!!」
――――「結局なんも見つからなかったな…。」バシリア達は場所を変え、視点を変えつつ、1日かけて渓谷を探し回ったが、遺跡らしきものを見つけることはできなかった。夕方に合流し、全員揃って馬に乗ると、とぼとぼと帰路を辿る。「遺跡なんて目立つもの、こんなに見つからないことある?」「全然ありそうになかったな…。」「…もしかしたら、隠されているのかもしれないな。崖だとか地下だとかに。」「そのような遺跡も多いですからね。そう思って、入り口などが無いかと探しましたが、それらしき物も見つかりませんでしたね。」「『神の指』ってのがヒントなのかもしれないけど、ヒントがそもそも見つからないんじゃ意味ねえだろ!!」「…まぁ、こういうこともあるだろう。明日はもう少し奥の方を探してみよう。」「これ見つかるのかなぁ~~…。」疲労と不安を抱えながら、4人は兵舎に帰還した。バシリアは報告に行くと言って途中で別れたので、チェリ達は真っ先に、ブローニャ達のいる病室へと向かった。病室の扉を開くと、ブローニャがジタにご飯を食べさせてやっている光景が目に入った。「…何してんの。」「こいつが食べさせろって言うから…。」「違ッ…!!」チェリとヘザーの目線に、ジタは途端に恥ずかしくなって怒鳴った。「なんだよその目はッ!!」「べっつに~?」「あたし達が汗水流して遺跡探ししてきたってのによ…。」「し、しょうがねえだろ!!ほら、手首!!怪我してんだから!!―――ッてぇ…!!」必死に言い訳するあまり脇腹の傷口に響くジタ。チェリ達はそれを尻目に、他のベッドが空いてることに気づいた。「オレリアとデジャは?」「先に食い終わって、休憩室で2人でボードゲームしてるぞ。」「老後のおばあちゃんか何か?」「私達のこと心配なんじゃなかったの!?」「暇だったんだからしょうがねぇだろ。」一言余計なジタにブローニャが睨みを利かせる。「心配してたに決まってるだろ!無事に帰ってきて何よりだ。」ジタはチェリ達に進捗を尋ねようとするが、3人の様子を見て察する。「それで?…まぁその様子だと、ハズレ、って感じか。」「そんなとこね。そもそも遺跡が見つからない。」「あー…。」
――――そしてその後、皆で休憩室に集合した。バシリアがテーブルの上に地図を広げ、指を差す。「今日はこのあたりを探したが、遺跡どころか手掛かりすら見つからなかった。」うーんと頭を悩ませる一同。「この地形じゃあ探すにも時間かかりそうだな。」「せめて『神の指』とやらが何かわかればなぁ…。」だが話し合いの結果、結局手当たり次第探すしかない、という結論に至った。

2日目。再び同じメンバーで遺跡の捜索に出る一行。居残り組は1日目と同じように4人と兵士達を見送ると、療養のために暇を持て余していた。動けもしないとなると、出来ることは限られる。「…なんか今日は遅くねぇか?」病室で4人揃ってカードゲームをしていると、ふとジタが呟いた。窓の外を見ると、いつの間にか日がとっぷりと暮れてしまっていた。「…確かにそうだな…。」「特に報告などは受けてないな。」「粘ってんのか?」そんな風に話していた時だ。複数人の足音が、ブローニャ達のいる病室へ向かってくるのが聞こえた。「おっ、噂をすればじゃないか?」そうして皆の視線が扉に注がれた時だ。その向こうから、浮かない顔をしたバシリアが現れた。それを見た瞬間、4人は"何かあった"のだと察した。ブローニャは立ち上がり、バシリアの元へと近づく。「…どうした?何があった。」そしてその後ろに、ヴィマラはいても、チェリとヘザーの姿が無いことに気づいた。嫌な予感が過る。バシリアは重々しく口を開いた。「チェリとヘザーが行方不明になった。」「……!!」皆が息を呑み、ブローニャとデジャが目を見開く。「…夕方になっても集合場所に来なくてな…。その後も暫く探し回ったんだが…見つからなかった。…すまない…。私が着いていながら…。」バシリアが申し訳なさそうに謝罪する。そんなバシリアにヴィマラも続く。「私も…。目を離してしまったばかりに…。ごめんなさい…。」ヴィマラも不安そうな表情で謝罪する。「…お前達のせいじゃない。」ブローニャは2人にそう声をかけると、身支度を始めた。デジャも同様だ。「おい、どこ行くつもりだよ!」「あいつらを探してくる。」「…こんな夜中にか。」「2人は疲労が溜まってるだろうから休んでてくれ。私達は2日間休息をもらったから、体力が有り余ってる。」「そういう問題じゃねえだろ!」そんなブローニャの腕を取り、バシリアがその動きを止める。「夜は危険だ。お前達もよくわかっているだろう。」「…」「あそこは深い渓谷で、ただでさえ影が多いんだ。…お前たちが思っているよりずっと、あそこは暗闇が多い。…何かあっては、チェリ達を探すどころじゃなくなる。」「…」「それに、2人には念のため食料と水を持たせてある。…すまない。気持ちはわかるが…捜索は明日、明るくなってからにしよう。」その言葉に、デジャは力が抜けたようにカバンを下ろした。俯くブローニャは、ベッドにすとんと腰をかけると、「…わかってる。…すまない。」と、力なく呟いた。そしてバシリアも、「…すまない…。」と、今日何度目かもわからない謝罪の言葉を口にする。少しの沈黙の後、ブローニャが再び口を開いた。「いや、私こそ…。先走ってすまなかった。今、冷静になった。」そしてふうとため息をつく。「…大丈夫だ。」「!」ブローニャが上げた顔からは、前向きな意志の強さが感じられた。「…大丈夫だ。あいつらなら。―――…信じてるからな。」その言葉にジタが反応する。そして、ブローニャとデジャは目を見合わせて頷いた。「明日の朝、早い時間に出立しよう。」「あぁ、勿論だ。」その言葉に皆も合意した。

3日目。チェリとヘザー捜索のため、全員が早朝から準備を始めていた。「お前、怪我はどうしたんだ。」デジャの問いかけに元気良く歩いて見せるオレリア。「ほぼ治った!」「!?」それを見て驚愕する一同。「早すぎねぇ!?」「私代謝がいいんだよ。」「いやいや…良いにも程があるだろ…。」「私の看病が良かったってことか。」「ボケてんのか?それ。」「オレリアは昔から傷の治りが早いのよ。完治、ってわけではないでしょうけど、大分良くはなってると思うわ。」「ほう…そういう体質ってことか。」「羨ましいな…。」「デジャとジタは大丈夫なのか?」「問題ない。」「あぁ。激しい動きさえしなけりゃ大丈夫だ。」皆の怪我の具合と体調をひと通り把握し、最終確認を済ませる。「…それじゃあ、行くぞ。」そして、準備を整えた皆は、日が出る前に渓谷へ向かって出立した。
――――「チェリとヘザーはあのあたりへ探しに行った筈なんだ。…だが、何も見つからなくてな。」渓谷に到着するや否や、チェリとヘザーの担当エリアへと足を踏み入れる。「…なるほどな。」初めて訪れる居残り組は、あたりを物珍しそうに見渡していた。「確かにこれは…骨が折れるな。」「見通しも悪いしなぁ…。」「ともかくそういう訳だから、あまり離れず捜索しよう。2人組で行動するように。」「わかった。」そうして手分けして2人を探すこととなった。
――――数時間ほど捜索を続けたが、チェリとヘザーは一向に見つからなかった。無情にも時が流れ、焦りが加速する中、デジャがあることに気づいた。谷の奥へと進んだ時、視界に入ってきた背の高い岩の先端が、ふと指の形に見えたのだ。「(『神の指』―――…。…まさか…!?)」はっとして岩の周りを探してみるが、何も見つからない。「(『指差す先』―――…まさか上空ってわけでもないよな…。先…―――)」そう考えながら視線を移すと、岩の"影"が伸びた先が、崖の斜面を指していることに気づいた。「!!」すぐさまそこへ近寄り、ぺたぺたと触れてみるが、何もない。「(…バシリアの話だと、言い伝えの前文があったって話だが…。…それがもし、季節や時間を指す内容だとしたら…。)―――ブローニャ!」「!どうした、何かあったか?」近くにいたブローニャが駆け寄ってくる。ブローニャに対し、自身の推論を述べるデジャ。「…!」「影の動き方を計算すれば、おおよその検討は付けられるんじゃないか。」「…やってみよう。」そして2人協力しながら、太陽の位置から、影の遷移する方向の予測を立てる。それに基づきながら周囲を探索する。そして、「…?」ブローニャが崖の一角に違和感を見つける。「ここだけ色が…。それに、何か亀裂のような…?」不審に思い、あちこちと触ってみると、崖の壁の一部が動き出した。「…!!デジャ!!」「!」すぐさまデジャが駆けつける。そして2人で壁を押すと――――「…これが、遺跡だって…?」デジャとブローニャが見つけたのは、"扉"のようだった。その奥には、石垣で覆われた通路が続いていた。
――――全員を呼びつけると、皆が驚きながらその中を覗き込む。「凄いな、デジャ…!」「たまたまだ。見つけたのはブローニャだしな。」「デジャが気づいてくれなかったら私もわからなかった。」「…まさか、岩の形を指していたとはな…。」「謎解きだったってわけかよ…。」ふとジタが気づく。「…待てよ?じゃああのチェリ達がこれを解いたって?」それを聞いて、何故か表情を硬くするオレリア。「まっさか~!あいつらが解けるわけねえだろ!」「もう!!失礼じゃない!!」ヴィマラがオレリアをはたく横で、バシリアが呟く。「…だがあの火…。明らかに最近、何者かが通った跡だな。」「…確かに…。」通路の脇には火が灯っており、煌々と通路内を照らしていた。「…ともかく、問題はこの先に2人がいるかどうかだ。」「2人じゃない可能性も…あるだろうしな。」「…何があるかわかったもんじゃねぇな…。」ごくりと唾を飲む皆に、バシリアが背を押すように言い放つ。「皆、覚悟を決めろ。」皆が頷いたのを確認すると、自身が先導する。「お前たちは外で待機していてくれ。」「はっ!」部下に指示を出すと、バシリアは暗闇の奥へと進み始めた。そして皆も、その後をついていくのだった。
――――石垣で囲われた通路を歩いていく一行。「よくもまぁ、こんなもの作ったもんだ。」「すごいな…。」「岩盤が丈夫だからこそできるんだろうな。…それにしたって、掘り進めるのも大変だったろう。」「すごい…!!どうやって掘ったのかしら…!」「興奮すんな。」そうして5分ほど歩いた先だった。「!広い空間があるぞ。」通路の先に開けた場所が見えた。少し足早になりながらそこへ向かう。すると、奥の方から何者かの声が聞こえてきた「…!この声は…!!」ブローニャとデジャがバシリアを追い抜いて走っていく。通路を抜けて先には―――「チェリ!!ヘザー…!!」そこには、檻に閉じ込められたチェリとヘザーの姿があった。ブローニャ達の存在に気づいた2人が、檻の隙間から手を伸ばしながら泣き出す。「わ~~~ん!!ブローニャ!!デジャ!!」「もうダメかと思った!!!来てくれてほんと良かった!!!」2人に近寄っていくと、檻越しに抱きしめてやるブローニャ。バシリア達も後から近づいてくる。「大丈夫か?怪我は?」「怪我はない!!この檻が邪魔なだけ!!」その元気な様子に、ブローニャとデジャだけでなく、皆がほっと胸を撫でおろす。「そうか…良かった…。」「無事でよかった…!」バシリアとヴィマラも笑みを取り戻した。そんな2人を見て、申し訳なさそうに謝罪するチェリ。「2人もごめん、心配させて…。」ようやく全員が揃って安堵すると、ブローニャ達の意識はチェリ達を囲う檻へと向かった。「…というか、なんなんだこれは?何があった?」「敵がいるのか?」「もしかして…遺跡とかじゃなく敵の本拠地…?」口々にそう言ってあたりを見回す。そんな仲間達に、チェリはバツが悪そうに告げた。「え~~っと…どこから話していいのやら…。」「そもそもお前達はどうやってここに辿り着いたんだ。」「んっとね…。」
―――― ~回想~ 指の岩付近をうろうろと歩き回っていたチェリとヘザー。「も~~~!!ほんとに遺跡なんてあるの!?こんだけ探しても見つからないなんておかしいじゃない!!」「もう埋もれちまったとかじゃねぇのかなぁ…。」「もう良くない!?遺跡見つけたところで、欠片があるとも限らないんでしょ!?私達で見つからないなら、悪党達にも見つからないわよ!!」「確かになぁ…。」丸2日かけて探し回り、既にくたくたの2人。「は~~もう疲れた…。一回休憩!」ヘザーがそう言って崖面に寄り掛かった時だ。触れた壁が後ろに移動する感覚があった。「わっわっわっ!!なんか開いた!!なんか開いたぞ!?」「何これ!?」慌てて中を覗き込むと、奥には通路のような道が続いていた。そしてどうやら、ヘザーが押したのは扉であることがわかった。「えっ!!嘘ッ!!見つけちゃった!?遺跡!!」「あっはは!!すげぇ!!マジかよ!!ほんとに!?」「お手柄じゃない、ヘザー!!」「よっしゃー!!」そう言って2人でいぇーい!とハイタッチをする。「ね、ちょっと入ってみない?時間も時間だし、行ってすぐお宝があれば、それ持って帰っちゃって終わりだしさ!」「まぁ確かに…。わざわざ皆を呼びに行くのもなぁ。ちょっとだけ様子見に行くか!」そして、もしものためにとバシリアから持たされた松明作成セットを取り出し、2人で中へ進んで行ったのだった。 ~回想おわり~
――――「たまたまか…。」「だから言っただろ!こいつらにわかるわけないって!」「ははっ!そうだよな!私だってわかんねーもん!」チェリとヘザーを、自分達と同レベルの馬鹿だと思っていたジタとオレリアは、ただの杞憂だったとわかり安心していた。「ちょっと!!よくわかんないけどあの2人腹立つんだけど!?」「なんか知らねーが馬鹿にしてやがんな!?」檻の中からぎゃーぎゃー騒ぐ2人を見て、余裕を見せるオレリア達。「こうして見ると、なんか檻に閉じ込められた動物みたいだな!」「あっはは!ほらよしよ~し!」「なんなのこの大人2人!?」「クッソ~~~~!!舐めやがって!!」大人げない2人に他の面々が呆れる。「全く…。」苦笑いしていたバシリアがチェリ達に問いかける。「それで、中で何があったんだ?この檻はなんなんだ。」そう問われ、チェリが腕を上げてどこかを指差す。「それよ、それ!!」チェリが指差す先を目で追うと、そこには岩の壁が。右端には扉があり、壁中央には、何か文字のようなものが書かれていた。「えー…と、何々?『"浮足立つ"とはどういう意味か?①: 喜びや期待を感じ、落ち着かずそわそわしている。②: 不安や恐れなどの感情を抱き、落ち着きがなくなる。①が正解なら左の石版に、②が正解なら右の石版の上に乗りなさい。』―――…なんじゃこりゃ。」「クイズってことか?」そして皆が、チェリとヘザーが乗る石版の場所を見る。「①…。」「なっ…、何よ!!」「正解が②だから、罰を受けたってことか。」えっそうなの?という顔をするオレリアとジタ。「デジャ、お前もわかってたのか…?」「なんだ。一般常識だろ。」「…!!」2人が打ちひしがれる中、チェリとヘザーは言い争いに発展していた。「こいつが馬鹿な答えしたから!!」「はあっ!?あんただってわかんないって言ったじゃない!!!」「『学校で習ったからわかる!』って自信満々に言ったのはどこのどいつだよ!!」「ぐぅッ…!!」チェリがぐうの音も出なくなった頃に、バシリアがあごに手を当てて、納得したように呟いた。「…つまり、出された問題に対して不正解だと檻に閉じ込められ、正解だと扉が開いて先に進める――ってことか?」「えっ?じゃあ…、」試しにと、ジタが右の石版に足を乗せると、扉がゴゴゴ、という音を立てて開いた。「…なるほどな…。」「す…すごいな…。」「この仕掛け…石版で重さを量り、誰かが乗ったことを感知した時だけ、扉が動くという仕組みなのですね…、すごい…!!」「お前は黙ってろ。」興奮気味のヴィマラにオレリアが冷静に突っ込む。「まぁ、ルールはわかったが…。」そう言ってブローニャは檻の柵を手で握る。「これはどうやったら脱出出来るんだ…?」「わかんねぇよ…石版に乗ったらいきなり下から生えてきて…。」「じゃあ持ち上げることもできないわけか。」「剣で斬る…は出来ないか。」「あの悪党の女がいたらな…。」「それは間違いないけど…。」「…ジタ、お前の力でこの檻を切れないのか?」「俺もそう思ってた。」そう言ってジタが剣を取り出して柵に当てる。…が。「…駄目だな。俺の力も、多分温度に限界があるんだ。正直こいつは厳しいな。」「ジタの剣でもダメなの!?」一縷の望みに賭けていたチェリは、それが叶わないと知るとがっくりと項垂れる。「ま、まさか死ぬまで出られない…!?」「そ、そんなわけないだろ!諦めるな!」「でっ…でもぉ…」そう言って後ろに下がるチェリの足元に、何かがぶつかった。「え…?」「…お、おい、それ…。」それを見たヘザーが青ざめる。それは―――骨のような何かだった。それに気づいた瞬間、チェリが再び泣きながらブローニャの元へと駆けていく。「いやああッ!!こんなとこで死にたくない!!ブローニャぁ〜〜〜!!」そんなチェリを檻越しに抱きしめ、頭を撫でてやるブローニャ。「だっ…、大丈夫だ!!なんとかする!!絶対にこんなことに置いていかないぞ!よしよし…!」「わあぁ~~~~ん!!」その時、壁の岩が動いた。「!?」「な、なんだ…!?」皆が警戒する中、回転した岩壁の向こうから、また別の文字が現れた。『誰かしらが全問正解すれば、全員出られるよ』「うわあッ!?答えた!?」「つーかノリ軽ッ!!」「なんつータイミングで説明だよ…。」内容よりも、あまりのタイミングの良さに薄気味悪さを感じる一行。「す、すごいです…!もしかして失われた技術を使った音声認識…!?」「テンション上がってんじゃねぇよ。」「…だが、やることは決まったな。」バシリアが真剣な顔で述べる。「私達は問題を全て正解する。そして、チェリとヘザーを助け出す!」「!」「最悪これだけの人数がいるんだ。1人ずつ問題を解いて、もし間違えて捕まったとしても、残ったメンバーが先に進めばいい。」「生贄ってことか…。」「言い方!」そして開いた扉の先を見つめた。扉の奥には通路が続いており、その先にはまた開けた空間があるようだ。ブローニャはチェリとヘザーに向き直る。「チェリ、ヘザー。悪いが少しだけ待っててくれ。私達は先に進む。…必ず、全問正解して帰ってくる。」泣きそうな顔で頷く2人。「うん…ッ!!」「絶対だぞ!!待ってるから!!」「あぁ。約束する。」そして皆で、意を決したように扉の奥を見つめた。「よし、行くぞ!!」
――――通路を歩きながらジタが呟く。「へっ、でもうちはバシリアもいるし、勝ったも同然だな。」「ん?まぁ、兵士もそれなりに頭脳や知識も求められるからな。自分で言うのもなんだが、それなりに備わってると自負している。」「じゃあ任せたぞ、姐さん!!」「勿論だ!」――――『この世で大切なものは、"頭脳"?"筋肉"?』「筋肉だな!」ガシャーン!!と仁王立ちのまま檻に捕まるバシリア。「馬鹿かよ!?」「筋肉馬鹿すぎるだろ!!」「な…ッ、なんでだ!?筋肉がなければ敵に抵抗もできないんだぞ!!襲われたら頭脳なんて役に立たないじゃないか!!生きるために必要なのは筋肉だろ!!」「それはそうだが…。」「つーか問題がクソすぎだろ。こんなの人と状況によるじゃねぇか。」ジタの言葉で岩壁が動く。『なお、問題文にケチをつけるようなら、全員閉じ込めます』「…」途端に口をつぐむジタ。「やっぱり音声認識してるだろ…。」「す、すまない…。」「気にするな。」
――――項垂れるバシリアを置いて、次の部屋へと進む。「よし、次は私がやろう。」「だ、大丈夫か、デジャ…。」買って出たデジャに、ブローニャが心配そうに声をかける。「任せろ。余程変な問題でない限り、私でもできる筈だ。」そして岩の壁が動く。そこには、文字と一緒に図形が書かれていた。『【問題】点Pは、1辺5cmの正方形ABCDの辺上を AからB、Cを通ってDまで毎秒1cmの速さで動きます。点PがAを出発してからx秒後の△APDの面積をy㎠とするとき、xとyの関係を式に表しなさい。なお、この問題には時間制限があります。』「「!?」」問題を見て驚愕する一同。デジャも困惑が隠せない。「計算問題…だと…!!」「な…なんだこの動く点Pって…!?」「しかも時間制限アリかよ!?」デジャが慌てて岩版の上に置いてあるペンのようなものを手にし、岩上に計算式を書いていく。「ま、待て…、三角形の大きさは底辺×高さ÷2だから…でもPが動くってことは可変式…?それってどうやって表すんだ…?x?y…!?」「な、なんか出来そうで出来なさそう…!!」「なんだよこれ!!知らねぇよ!!」「う…うぅっ…!!」「デジャ頑張れ!!」「あんな困ってるデジャ初めて見た!!」そして時間が切れ、ガシャーン!!と檻が閉まる。「…」膝をついたまま落ち込んだ様子のデジャに皆がフォローを入れる。「しょ、しょうがないわよ、デジャ!」「お前はよくやった!」「気にすんなって!問題が悪――――…ゴホンッ!」
――――次の部屋に入ると、先に文字が表示されていた。『ワヘイ王国の歴史に関する問題です』「世界史!?」それを見て、ブローニャが一歩前に出る。「ワヘイ王国の問題と言えば私しかいないだろう。」「おいおい、大丈夫か…?」「私もそれなりに王国史を学んできた。ある程度の問題には答えられるだろう。…何よりも、ワヘイ王国兵士として、この問題を間違えるわけにはいかない!!!」―――『ワヘイ王国第三代目国王の名は―――』「わかるぞ!!ガレッツォ国王だ!!!」『ガレッツォ国王ですが、』「!?」『その愛人の名は何?』「…!!?」―――檻の中で四つん這いになりながら落ち込むブローニャ。「いいや、もう我慢ならねぇ!!問題が悪ぃぞ、問題が!!!」「正解させる気ねえだろ!!!」「わっ…、私は…、兵士だというのに…!」「落ち着いてブローニャ!いくら兵士だろうと、普通は国王の愛人の名前なんて知らないわ!!」「寧ろよく国王の名前が出たよ…。」
――――更に次の部屋へ進むと、そこには―――…「…なんだこれ?」「なんかこれまでと違うな…。」石畳の一部が四角く切り取られたように窪んでいる。『遺跡に関する問題です』「おっそれならヴィマラしかないな。」「勿論です!行きましょう!」そしてまた岩壁が回転し、追加の文字が現れた。『1人は回答者、1人は走者です。』「走者…?」すると、窪んだ石畳の部分が、独りでに動き出した。滑るように後方へと流れていく。「はあ!?」「なんだこれ!!」『走者が走っている間のみ、回答者の回答が有効になります。』「なんじゃそりゃ…。」「意味がわからねぇが、やるしかないみたいだな…。」そう言ってオレリアがジタの背中を押し出す。「はあッ!?」「お前やれ。」「お前…ッヴィマラが答えるんだから、お前がサポートしてやるもんじゃねぇのかよ!!さっき脚治ったって言ってただろうが!!」「あー…いてて…まだ治ってねぇなこれ。こんな状態で走ったらうっかり傷口が開いちまうよ。」「お前…ッ!!」「走りたくないだけよ。どうせここに来るまでにもう疲れたとかでしょ。」ギクリ、とヴィマラの指摘に反応するオレリア。「療養してたから体力面で不安があるだけだ!!ジタ!!お前なら大丈夫だって!!」「クソ~~~!!俺だって条件はあんま変わんねぇのによ~~!!」流石に脚を怪我した奴を走らせるわけにはいかないと、ジタは文句を垂れつつも石畳に向かう。そして、流れる石畳の上に、足を乗せて歩き出す。ウォーキング程度の速度に、余裕綽々といった態度を見せる。「…なんだ、このくらいならいけるんじゃねぇか?」「頼んだわよ、ジタ。」「あぁ。そっちもな!」そして岩壁が回転し、問題が出現する。『エスニェット文明時代の後期に作られたとされる遺跡を、5つ答えなさい。』「いッ…5つ…!!」「!!」すると、急に石畳の流れる速度が上がった。「ほら走れジタ!!」「~~~そういうことかよッ!!」走り出すジタ。ヴィマラは記憶を辿りながら、目を瞑ったり視線を宙に舞わせつつ、答えていく。「え…え~~…、テクラマカ遺跡、ネヒラ遺跡、トーレ遺跡…、~~~~…ッ…!!」「頑張れヴィマラ!!」「はッ…早くしてくれッ…!!」「あ…あれ…!!オレリアが料理名みたいって言ったの…!!マ…マ…!!あっ!!マリブ遺跡!!」「うし!!あと一つ…!!ジタも頑張れ!!」「む…ッ、無理だッ!!病み上がりにキツイってこれ!!!マジで!!頼む!!早くしてくれヴィマラ!!」「エスニェット文明…エスニェット…、…ッだめ…!!出てこない!!な、なんだっけ…!」「クソッ…焦って頭真っ白になってんな…。」「いッ…!」腹の傷に響いたジタが体勢を崩す。「あぶねッ!!」慌ててオレリアが支えに行く。と、「おわッ!!」「!?」石畳の動きに流されたジタが後ろに飛ばされ、助けに来たオレリアの顎に頭をぶつけた。2人で吹っ飛び、後ろに倒れ込む。「~~~~ッてぇ~~~!!!!」ぜーぜーはーはーと息を切らすジタと顎の痛みに耐えるオレリアは、倒れたまま動けずにいた。そんな中、無情にも檻がヴィマラを捕える。「そ…そんな…!私が遺跡の問題を…間違えるなんて…ッ!!」落ち込むヴィマラに、オレリアが痛みに耐えながら声をかける。「落ち込むなって…。こんな状況じゃ仕方な―――」「まだまだ私の知らないことがあるのね…!!面白いわ!!」「普通に知らないだけだったか…。」「逆に燃えるタイプかよ…。」
――――「傷口開いてねぇのか?」「そこは大丈夫だ。」「ならよかったけどよ。」息も切れ切れなジタとオレリアが通路を進んでいた。「…つーか、まだあるのか~~?問題どんだけあるんだよ…。遺跡広すぎんだろ!!」「今のところ全問不正解だぜ。これ以上間違えたら人が足りねぇよ。」「…全員バラバラに檻の中で野垂れ死に、か…?」想像した瞬間、背筋が凍る。「…次こそは正解しねぇとだな…。」「…でも、出題の傾向的にどんどん正答率が下がるぜ。2択がどれだけ優しかったかだな…。」「あークソッ…!!」話している内に、開けた空間に辿り着いた。「良かった…。さっきの動く床はねぇな。」「…最初のヒントも無いってわけか。」そしてオレリアが前に出る。「まぁ見てろよ。私にかかれば楽勝だって。」「おい待てよ…ッ!!」「お前に託すぜ。」「!!」「後はお前に任せた。」「オレリア…。」だが、ジタはふと気づいた。「とか何とか言って、お前最後責任追いたくないだけじゃねぇかッ!!」図星とでも言うように、へっと笑うオレリア。「さて…。今度はどんな問題が…。」―――『これから小説の一節を読んでもらいます。問題文を読み、この登場人物の心情を答えなさい。』「知るかぁッ!!!!」ガシャーン!!と、オレリアも檻に閉じ込められた。「…私は、人の心がわからない人間なんだ…。」「何地味にダメージ受けてんだよ。」ジタは、ガシャ、と檻を足蹴にする。「は~~~~…俺がやるしかねぇのか…。」開いた扉の先を見る。その先にはまだ何かありそうだった。「…悪いな、ジタ。」「…」「頼んだぞ。」真剣な顔で言うオレリアに、「わかってるよ。」と答えて扉の向こうへと歩き出した。
――――「あ~~~これで終わりならいいんだがな…。」嫌々通路を進み、例によって開けた場所へと出る。「!!」そこは最初と同じように、石版が二つ並んでいた。「ラッキー!!2択じゃねぇか!!」そして岩壁が回転する。『最終問題です』「…!!…おいおい、マジかよ。」ジタの顔に冷や汗が浮かぶ。「こうなったらなんでも来いよッ!!」そしてまた岩壁が回転し、問題が出現した。『薬草として使えるのはどっち?タイネル草orミカラ草?』「知るかッ!!!」ジタが思わず怒鳴る。「俺もあちこち旅して来たけど、聞いたこともねぇよ、そんな野草!!またマニアックなところ出しやがって…ッ!!」しゃがみ込んで考え込むジタ。「(クソッ…!どこまでも舐めやがって…!!!そんなの学者でもねぇんだから、知るわけねぇだろ…ッ!!)」だが不正解では仲間達を救い出すことは出来ない。仲間の顔が過った時、ふとジタは、ブローニャ達の旅の話を思い出した。―――『薬草が効いたみたいなんだ』―――「――…!!」そして、その時の話の流れを思い出す。―――『なんか、火山の麓にある場所で、そこでしか自生しないらしいわよ!』『ブローニャの傷も早く治ったもんな。』『あぁ、名前はなんだったか…。』『えー…と、確かねぇ…。』―――「(…まさか…)」ジタは立ち上がると、右の石版に乗った。そして―――「…!!」檻は降りてこず、代わりに目の前の扉が開いた。時を同じくして、各部屋で全員を捕えていた檻が解除される。「えっ!?嘘ッ!!」「あッはは!マジかよ!!」皆、慌てて通路の先へと走っていく。「ジタ!!お前やったのか!?」オレリアの補助をしながら、ヴィマラも一緒に現れた。「お、おう、まあな。」自分でも驚いているのか反応が鈍いジタ。そして続々と仲間達が集まってくる。「ジタがやったのか!?」「すごいじゃないか!!」「見直したぞ!」「やるじゃん!!ありがと~~ジタ!!」口々に褒められたジタは、照れ隠しに文句を言う。「お前らこういう時ばっかりよ~~!!」そう言うと皆が笑った。だが、ジタも悪い気はしなかった。
――――「で、問題は何だったんだ?」「薬草として使えるもの、か…。」「あッ!!これって確か…。」「ワヘイ王国にあった稀少な薬草か?」「…!!」答えを知って目を見開いたブローニャ達4人は、ジタの方を見た。「…お前らの話を聞いてなきゃ、絶対正解してなかったぜ。」そう言ってジタが笑う。「よく覚えてたな…。」「すごいじゃないか…!」「じゃああたし達のおかげじゃね?」「確かに!」「おい!!正解したのは俺だぞ!!」そうしてブローニャ達がきゃっきゃと騒ぐ中、バシリアは扉の奥を覗き込んでいた。「…この先に宝があるのか…?」そしてそれに倣って皆も身を乗り出す。「…行ってみよう。」いよいよといった面持ちで、皆でその奥へ進み出した。そして、30Mほど通路を進んだ先には――――「わぁ~~~…。」これまでの部屋より天井が高く、横幅もある広々とした空間が広がっていた。美しく磨かれた岩壁と石畳に囲まれたその中央奥には、装飾が施された祭壇のようなものが置かれていた。どこか神秘的な雰囲気に思わず声が漏れる。「…な、なんかすげぇな…。」「神聖な場所、って感じする…。」少し緊張した面持ちで、ぞろぞろと歩みを進めていく一行。祭壇の上には大きな箱が置かれており、その側面には扉がついていた。「じゃあここはジタが開けないと!」「俺かぁ?」「結局、正当な正解者はジタだけだもんな!」「え、そうなの?何よ!皆間違えてんじゃん!!」チェリの言葉に皆が笑い、ジタが箱に近づく。「…開けるぞ。」皆ドキドキと心待ちにしながらその様子を見守っていた。ギィ、と古めかしい音を立てて、小さな扉が開く。そこには―――…「………………」それを見て、皆思わず絶句した。ジタはそこから物を取り出すと、皆の方へと見せる。何やら人の形を象った像だ。その土台には、こう記されていた。―――『この遺跡を作った偉大なる私の像』―――「………………」再び沈黙が落ちる。そして少し経った後、ヘザーはジタから像を奪い取ると、それをたたき割ろうと振りかぶった。慌ててそれを止めようとするブローニャとバシリア。「落ち着けヘザー!!」「気持ちはわかる!!気持ちはわかるが―――…もしかしたらこれが欠片の可能性も…!」「ないですね。」バシリアの言葉を、ヴィマラがきっぱりと否定した。「…」動きを止めたバシリア達は、ゆっくりとヴィマラに振り返る。「欠片ではありません。」あれほど優しく穏やかなヴィマラが、こんなに冷めた目をするのか―――と2人が思っていると、ガシャーン!!という音を立てて、像が砕け散った。皆、冷静にそれを見下ろしていた。「なんだよ、骨折り損かよ!!」「あんだけ頑張ったのに~~~!!時間と労力返してよ~~!!」「なんだったんだ…この2日間…。」皆が項垂れる中、壊れた像を見て、デジャがあることに気づく。「おい、待て!」「!」その言葉に、帰ろうと歩き出した皆が振り返った。「…金だ。」「!?」見ると、像の中には金塊が隠されていた。そこには一緒に手紙も入っていた。それを開き、内容を読み上げるデジャ。「…『正解者には正当な報酬を』―――…だそうだ。」呆気にとられた皆だったが、「…なんだよ、やるじゃん。」「そこまでお見通しだってわけか…。」先ほどまでの怒りはどこへやら。気が抜けるような感覚に襲われるのであった。
――――「今後は勝手な行動はしないこと!ちゃんと仲間に連絡してから侵入すること!いいな!!」「はぁ~~~い…。」帰り道を歩きながら話をする中、ブローニャがチェリとヘザーにきつくお灸を据えていた。「マジで無駄足だったな。」「しょうがねぇよ。探しつくして手掛かりが減ってきてる今、こういうのを一個一個潰していかなきゃならない状況だしな。」「あーあ!もう早く帰ろう~!」皆が愚痴を吐く中、ヴィマラは1人おかしそうに笑っていた。「…でも、なんだか楽しかった。」そんなヴィマラの言葉に、皆も同じように笑うのだった。


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